これから数十年間に世界の所得拡差は縮小する--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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教師は学生がリポートで盗作していないかどうかをコンピュータを使って調べている。ある研究によると、コンピュータによる評価は平均的な教師の評価よりも公平で、一貫性があり、有益であることが明らかになっている。ただし、必ずしも教師による評価を凌駕しているというわけではない。

教育のコモディティ化が所得平等を促進する

専門的なコンピュータシステムは医療や法律、金融、さらには娯楽の世界でも使われている。こうした発展を前提にすれば、技術的なイノベーションは最終的には、極めて精緻でユニークだと思われている多くの技術を、ありきたりの技術に変えてしまうだろう。

私はハーバード大学の同僚ケネス・フルート教授と共同で、数多くの商品の700年間の相対価格の動向を研究したことがある。

驚いたことに、穀物や金属など基礎的な商品の相対価格は、長期間にわたって平均値に回帰する傾向が見られた。偶発的な発見、気候変動、技術革新などによって、相対価格はある一定期間、劇的に変動する。その結果生じた価格差が、(暴騰した商品の価格を下げるための)イノベーションを誘発するのである。

もちろん、人間は商品ではないが、同じ原則が適用できる。熟練労働の賃金が未熟練労働に比べて高くなるにつれて、企業は高賃金労働の代替物を利用することにより、高コストから逃れようとする。それには何十年もかかるかもしれないが、人工知能が次のイノベーションの波を引き起こせば、それは早く実現する可能性もある。

熟練労働者は、自分たちの仕事が陳腐化するのを防ぐために、政府に対し法律や規制を制定するよう団結して圧力をかけようとするだろう。しかし、世界貿易で競争が行われるかぎり、労働節約的な技術開発を阻止しようとする熟練労働者の試みは成功しないはずだ。

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