圧倒的王者のアパホテル、4つの「ありえぬ数値」 「2000万人」「108%」「600人」「52期連続」

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客室のコンパクトさも徹底した経費節減を象徴している。ベーシックなアパホテルの客室は基本、ユニットバスを除いてシングル9㎡〜だ。9㎡は旅館業法で決められた最低限の広さ。

そのコンパクトさを揶揄されることもあるのでは……と尋ねたところ、元谷氏は「客室を1.2倍、1.3倍の広さにしたとして、単価を高くとれるのでしょうか?」と問いかけてきた。

続けて、「とれないならば最低限の広さを遵守して、レベニューマネジメントで最大の売り上げを確保します。だからアパは他チェーンに比べ、1㎡当たりの売り上げが業界でトップだと思います」と語った。

シングル客室
ユニットバスを除いて9㎡のシングル客室(写真:アパホテル提供)

従業員にとってもサスティナブルな経営を

ホテルは、利用者目線でサービスを付加することに注力しすぎると、従業員へ還元する利益が減ったり、負荷をかけてしまいやすい業種だ。そのバランスが難しい。

だが元谷氏は、「従業員が我慢することで成り立つ顧客満足は、持続可能ではありません。その仕組み自体を改善していかないと、業界全体の人手不足はいつまでも解消されません」ときっぱりと言う。

アパホテル浅草 蔵前駅前
限られた面積に対し、高層にすることで客室数を確保した『アパホテル〈浅草 蔵前駅前〉』。都営浅草線蔵前駅から徒歩1分の好立地に建つ(写真:アパホテル提供)
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削れる部分は極限まで削って高収益を確保し、従業員へのベースアップ、福利厚生を充実する好循環を生む。そこを一番に考えるからこそ、「52期連続黒字」は実現し、600人という内定者獲得もかなったのだ。

まさにサスティナブルな経営。すでに創業から半世紀を過ぎたアパだが、筆者には、次の半世紀も確実に生き残っていく未来が見えてきた。

次回最終回は、北米への挑戦と、今後の展望について解説する。

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笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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