北朝鮮で「Suica」型カードが超人気の理由 ポイントもつかないのに急速に普及
現在、北朝鮮ではいわゆる公定レートと市場レートがあり、訪朝した外国人に誤解を招くことがしばしばだ。現在、公定レートの場合は1ドル=約100ウォン前後で、これは外国人が宿泊するようなホテルや外貨商店などに掲示されている。
一方で、市場レートは北朝鮮ウォン貨と交換され、チャンマダンと呼ばれる市場などで交換される。このレートは現在、1ドル=約8000ウォン前後で推移している。
公定・市場レートに差はあるが、ナレカードが決済できる場所はすべて外貨でも同等のウォンで支払うことになるため、市場レートと差があるからと言って、ナレカードで支払う時との便益に差があるわけではない。
北朝鮮事情に詳しい、韓国・国民大学の鄭昌鉉(チョン・チャンヒョン)教授は、「ホテルからタクシーに乗ると料金は200ウォンとあるが、実際にタクシー側が受け取るのは現金で2米ドル。これをナレカードで支払っても、同じ2ドル相当分を支払うことになる」と説明する。この時の200ウォンのウォンは「外貨ウォン」と呼ばれる。
2つのレートが混在する北朝鮮の外為レート
外国人が宿泊するホテルでも、1泊の料金が1万ウォンと表示されていれば、その時のレートに相当する100ドル前後を支払う。このレベルのホテルであれば、日本や他国と同じような100ドル程度のホテルと施設やサービスとそれほど変わらない。
レストランでも700ウォンと表示されている食事を注文して支払うのは7米ドル、あるいはそれ相当のユーロや人民元で支払うことになり、ナレカードからは同じ金額分が差し引かれる。最近では携帯電話からでもナレカードへチャージできるようになっているという。
ナレカードが発行された目的は、「資金流通の速度と便宜性を保証するため」と、ナレカードを発行する朝鮮貿易銀行カード担当部署のテ・ウンゴル局長は言う。あくまでも国民の利便性を高めるためで、「カード導入は世界的流れに合わせて導入された」(テ局長)と強調する。
1978年に外貨専門銀行として設立された朝鮮金剛銀行で総裁を務めたことがある全勝勲(チョン・スンフン)氏は、北朝鮮では現実に照らし合わせて外貨の間接流通を容易にするため、「決済レート」と「現金交換レート」を定めていると説明、今後は他国のように一本化を図っていくだろうと述べた。また、「将来は当然、為替レートは一本化する方向にある。どういう政策が効果的なのか検討中」と、朝鮮社会科学院経済研究所の李基成(リ・ギソン)教授もかつて述べたことがある。
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