株高の追い風で「明るい世代」は"多数派"になるか 「貯蓄から投資へ」の先に「投資も消費も」

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実質GDPについても、生涯リターン(成長率)と学生時(13~22歳)リターン(成長率)を比較すると、株価のリターンとは異なる結果となった。

コロナ禍からの反動増による一時的な成長率の改善を除くと、年齢が低いほど低迷が続いていることがわかる。

むろん、株価は景気の先行指標であることから、今後、実体経済についても結果がついてくることが期待されるが、まだ時間がかかりそうである。

株価は成長を示唆しているのか、将来不安の反映か

両者の乖離の背景を考えることも重要だろう。

株価の上昇が今後の国内経済の成長を示唆するものなのか、金融緩和や円安による一時的な動きなのかを見極める必要がある。仮に一時的な動きであっても、それを国内経済の成長につなげていけるかどうかが重要とも言える。

幅広い世代で投資に対する関心が増えていることは実感できるが、最近では政府も老後に向けた「自助」の必要性を訴えているように、将来不安が高まっているからこそ「投資」に関心が高まっている面もありそうである。

株式市場に注目が集まっている背景も多様化していることが予想され、経済活動において前向きな世代が増えていくのかどうかについては、慎重にみていく必要もあるだろう。

総じて言えば、「貯蓄から投資へ」の後に「貯蓄から投資も消費も」につながるかどうかが重要である。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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