ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2--マーケティング手法の活用がヒットの秘訣《宿輪純一のシネマ経済学》
『ハリー・ポッター』は、イギリスの女流作家J・K・ローリングによるファンタジー小説の大ベストセラー、映画化されて一段と世界的に知名度が上がった。彼女はいまや小説や映画の売り上げで、通説では約800億円を超える大金持ち。大英帝国勲章も受章している。しかし、その小説が売れる前までは、かなり苦労したようである。
離婚後、小さい娘を抱え、スコットランド・エディンバラの姉の家に身を寄せ、生活保護も受けながら、喫茶店で原稿を執筆していたのは有名な話。しかも、貧困が原因でうつ病にもなったともいわれている。
小説が書き上がったあとでも、苦労は続く、なかなか出版社と契約ができなかったのである。このJ・K・ローリングという名前も、彼女の本名はジョアン・ローリングで、(今では何ともいえないが)出版社が作者が女性とわかると売り上げにマイナスということで、イニシャルにしたうえで、K(おばあちゃんの名前のKathleenから)というミドルネームをいれて、わかりにくくした。こんなことはアメリカでもあるようで『V.I. Warshawski(私がウォシャウスキー)』(1991年)という映画もあった(ウォシャウスキーは主人公の女性私立探偵の名前で、彼女は女性であることを隠すためファーストネームをイニシャルにしている)。
さてその『ハリー・ポッター』であるが、いつも名前は「ハリー・ポッターと~」というもので、(1)賢者の石、(2)秘密の部屋、(3)アズカバンの囚人、(4)炎のゴブレット、(5)不死鳥の騎士団、(6)謎のプリンス、(7)死の秘宝 PART1、そして8作目が、この『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』である。
今までも映画1本当たり約9億ドル稼いでいるようで、大変な(今はドルが弱いが)ドル箱映画である。