日本の「絵本」は世界に通じるコンテンツになる エフェクチュエーション理論で読み解く(後編)
しかし、熟達した起業家はその事実を理解したうえでなお、無力感にとらわれて能動性を失うことはありません。コントロール可能な要素に集中し、自らを取り巻く半径2メートル程度の世界に影響を与え、さらに新しい行動を生み出そうとします。
篠田氏にとって、新型コロナ感染症の収束や社会経済活動の制限はコントロール不可能な要素でした。その一方で、「EHONS」という新たな事業を企画し、すでに獲得している手段を活用することは自らコントロール可能な要素に基づく行動だったといえます。
そうして実際に行動を起こし、そこで得られた反応やフィードバックなどの外部環境の要素を取り込み、さらにコントロール可能な範囲を広げていったのです。
不確実性が高い中でのチャレンジでは、常に環境の変化に注意し、自ら操縦桿を握って不測の事態にも対処するパイロットの存在が不可欠です。
サブカルこそがメインカルチャー
日本にはイノベーター人材が不足していると考える方は多いのではないでしょうか。しかし、外からの評価は違います。アニメ、マンガ、ゲーム、ポップカルチャーなど、これほど創造性にあふれたコンテンツを世界に発信する日本人がイノベーティブでないわけがない。なぜ日本人は自信を持たないのか。そう海外の方に聞かれたこともあります。
日本ではアニメやゲームなどをサブカルチャーと呼び、文学や美術などに遅れて発展した大衆向けの新興文化として軽く見る風潮があります。そのため世界で称賛されていても、国内では正当に評価されにくい傾向があるのかもしれません。
しかし今、日本人のクリエイティビティの中心の1つは、確かにこれらの分野に存在します。その魅力を愛する人々にとっては、サブではなく、こちらこそがメインカルチャーだといっても過言ではないでしょう。