日本の「絵本」は世界に通じるコンテンツになる エフェクチュエーション理論で読み解く(後編)

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「EHONS」のケースもまた、日本にはクリエティブでイノベーティブな人材がたくさんいることを示しています。絵本作家はもちろん、作家に伴走しながら作品を作り上げて世に出す編集者、販売を通じて読み手に書籍を届ける書店関係者、そして、絵本の世界を大きく拡張した丸善丸の内本店の篠田店長。

パイロットとしてプロセス全体をコントロールした篠田氏はもちろん、誰か一人でも創造性を欠くステークホルダーがいたら、この事業は成功していなかったはずです。

「EHON」が世界語になる日

丸善丸の内本店店長の篠田晃典氏と吉田満梨氏(撮影:尾形文繁)

篠田氏には「MANGA」のように、「EHON」を世界の共通語にしたいという夢があるそうです。ステークホルダーの自発的なコミットメントを引き出すことで、自らの手持ちの手段と「できること」を拡張し、予期せぬ事態が起きても偶然を機会として活用して新たな行動を生み出す。

このようにエフェクチュエーションのサイクルを回していく先に、「EHON」が世界の文化になる未来が待っているかもしれません。

(構成:相澤 摂)

吉田 満梨 神戸大学大学院経営学研究科准教授
よしだ まり / Mari Yoshida

立命館大学国際関係学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(商学)。東京都立大学都市教養学部助教、立命館大学経営学部准教授を経て、21年より現職。専門はマーケティング戦略論。著書は『エフェクチュエーション』(共著、ダイヤモンド社)など。

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