日本の「絵本」は世界に通じるコンテンツになる エフェクチュエーション理論で読み解く(後編)
もともとあった手持ちの手段(手中の鳥)に、パートナーがもたらす新しい手段(資源)が加わることで、「何ができるか」も変わってきます。このようにエフェクチュエーションのプロセスを拡大しながら何度も繰り返すことにより、新たな事業や新たな市場が創り出されることになります。
不確実性に対処するパイロットの存在
まだどこにもない市場を創造したり、自社にとっては未経験の事業を立ち上げる場合、思いもよらない出来事やトラブルは避けられません。そうした事態をコントロールするのが、エフェクチュエーションにおける「飛行機のパイロットの原則」です。
オートパイロットシステムを搭載した飛行機にも必ずパイロットが搭乗しているのは、不測の事態に対処するためです。同様に起業家も、平時はさまざまな指標を通じて、また自身の目や足で現況を常に把握します。そして、何らかの予測しえない事態に遭遇した場合は、しっかりと操縦桿を握って状況をコントロールしようとします。
「EHONS」においてプロセス全体をコントロールしたパイロットは、言うまでもなく篠田氏です。最初はわずか2社だった協力出版社は10社、グッズのモチーフとなった絵本は60冊にまで、この3年間で増えました。
さまざまな立場や思いを持ったステークホルダーのコミットメントを引き出しながら、「できること」に集中して意味のある行動につながる意思決定をし続けた結果といえるでしょう。
コロナ禍という想定外の出来事をテコとして活用した「レモネードの原則」も、パートナーの獲得を通じて新たな可能性を共創していった「クレイジーキルトの原則」も、篠田氏がしっかりと操縦桿を握り、コントロールし続けたからこそ生まれたものです。
私たちは、自らの行動を通じて好ましい影響を与えられる範囲はごく限られたものであることを知っています。世界経済や平和といった大きなテーマはもとより、ビジネスや日常においても、コントロールが及ばないもののほうが多いかもしれません。