日本の「絵本」は世界に通じるコンテンツになる エフェクチュエーション理論で読み解く(後編)
「出版社と作家の方にご協力いただく以上、スタートしたら止まれない、ずっと動かし続けていくという覚悟はありました。しかし、そうは言っても人手はかけられません。だからこそチームメンバー選びには一切の妥協が許されないと思っていました」
作家と絵本の選定を担う児童書を知り尽くした売り場担当者。文具や雑貨のものづくりに長く携わり、メーカーとの交渉経験が豊富な社員……。
これはと見込んだ人材に一本釣りで声をかけていきます。それまでの仕事との兼業での参加ということもあり、最初は戸惑いを見せるスタッフもいましたが、事業への思いを伝えながら一人、また一人と口説き落としていったそうです。
「絵本グッズは、言ってみれば不要不急のものです。それでも、秋葉原のアニメショップのように遠くからわざわざ来店してくれる人は必ずいる。そういう熱い思いに向き合うには、生半可なものではだめなことはわかっていました。丸善に籍を置く限りは何らかの形でずっと『EHONS』に携わりたいという強い意志があるメンバーでなければダメだったのです」
社外のパートナーとも目標を共創する
チーム作りは社外にも広がります。仕事の発注者と受注者といった単純な関係からでは、絵本の作品の世界を守ると同時に奥行きと広がりを与えるオリジナルグッズを生み出すことは困難です。
外部のデザイナーやメーカーと何度も打ち合わせを重ね、相手の意見やアイデアを引き出しながら、ファンの期待を超えるものを作る。時には作家や出版社の側から、もっとこんなものを作ったらよいのではないかと提案されることもあったといいます。そこにあったのは、一般に効率が良いとされる分業とは一線を画すコ・クリエーション(共創)でした。
目標から手段を逆算する考え方では、誰が顧客で誰が競合かを識別して市場の機会や脅威を予測します。これに対して優れた起業家は、コミットメントを提供してくれそうなあらゆるステークホルダーと交渉し、互いにとって意味のある目標を共創しながらパートナーシップを構築する傾向があります。
これが、エフェクチュエーションにおける「クレイジーキルトの原則」です。