不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは
皮肉な見方をすれば、豊田氏が専制国家の「ドン」に映る。「トヨタイムズ」は国家(企業)ぐるみの国営放送や政府系新聞のプロパガンダに見えなくもない。しかし、そこには、強いリーダーのデメリットも見え隠れすることをお忘れなく。
東芝では、西室泰三氏、西田厚聰氏、佐々木則夫氏など、キャラが濃い「強く見えるリーダー」は達成困難な目標を設定し、過度な焦燥感を社員に与えた。ビッグモーターと損保ジャパンも強い(傲慢な)リーダーの「圧」が強すぎ、現場の苦言が届かぬ「お上」になっていたのではないか。トヨタグループも然りである。
「恐怖心、恥をかきたくない気持ち」が不正に
非上場企業・東芝の初代社長になった島田太郎氏は、昭和・平成型の強いリーダーには見えない。論理的に話すが、どこかひょうひょうとした雰囲気が伝わってくる。かつての東芝の社長とは明らかに異なるタイプだ。
島田社長に「ご自身も含めてコンプライアンスについてどのように考えていますか」と質問したところ、次のように答えた。
「恐怖心、恥をかきたくないという気持ちから不正が起こるのではないでしょうか。責任感が強い人ほど何とかしようと考えます。それがあたかも美談のように語られてきました。そんなのは美談ではありません。問題になっている課題事項や、間違いが生じたら、すぐに伝えてほしいと社員の方々にお願いしています。私にも直接(社内)メールをくださいます。そのたびに、私は、ありがとうございます、と一言添えメッセージを返信しています。間違いを叱責するのではなく、これからどうするか、と社員1人ひとりが思うことが大切です。私自身もそうしています」
アメリカで、大量リコールで辛酸をなめた豊田章男社長(当時)は、その経験を生かし、トヨタグループの陣頭指揮を執り、責任者として組織の変革をリードする、と宣言した。強いリーダーがより強いリーダーになり、改革が成功すれば、トヨタの「強い(組織)文化」がさらに強くなる。そこに死角はないか。
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