不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは

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こんな話がある。

ある経営破綻した大企業のトップは、自社の急変に驚きを隠せず、財務担当役員に思わずこういった。「どうしてこんなことになってしまったんだ?」。

実はこの役員、つねづね「CEOの喜んでいる顔を見るとほっとします」と微笑みながら話していた。CEOのご機嫌を損ねず、その場さえ凌げば役員報酬を得られる。その期間をできるだけ延ばし、高額の退職金を手にして逃げ切るには、悪い実態は隠蔽してでも、CEOに喜んでもらうことが重要なのだ。

しかし、この考え、行動は極めてグレーゾーンである。近年起こっている不正事件は、法の網をうまく潜り抜けようとして、法に触れてしまった例が多い。グレーゾーンに不条理を感じている人は少なくないだろうが、告発するにも「仕返し」される可能性を考慮しなければならなかった。

とはいえ、ダイバーシティ、コンプライアンス、心理的安全性、人的資本経営が叫ばれている時代である。報復人事をしてしまえば、メディアからもバッシングされる。人手不足の時代、若い社員のご機嫌を損なわないように、という流れは顕著。内部通報制度が当たり前の仕組みになっていることを思えば、ひと昔前に比べれば、従業員は守られるようになってきたと言えよう。

「強いリーダー」が生まれやすい組織文化とは

ここで、強い組織文化の死角について経営学の理論に基づき説明しておきたい。

タイプは違っても、強いリーダーは強い組織文化を持つ企業から生まれやすい。創業者および創業の歴史が偉大であればあるほど、強いリーダーはそれを、強い組織文化として利用しようとする。どこか、伝統的宗教が紆余曲折し、ときの権力者に政治利用されてきた歴史と重なり合う。

『エクセレント・カンパニー』(トム・ピーターズ、ロバート・ウォータマン著/大前研一訳/英治出版)という著書を読まれた方は多いだろう。2人の経営コンサルタントが著したこのオリジナル本は1982年に出版され、世界的ベストセラーとなった。

同書は超優良企業の8条件として、①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④人を通じての生産性向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を有する、などを抽出し一般化している。そして、そのベースには「強い文化」があると強調した。

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