不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは

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たしかに、強い文化を持つ企業には、主に4つのメリットがある。

① 従業員が「適切でない行動」を自覚することにより、常に監視するモニタリング・コストを低減でき、従業員の自発的行動を促す。

② 現場の臨機応変な対応が可能になる。

③ 価値観を共有することで、仕事に意味を見出し、従業員のモチベ―ションが向上する。

④ 阿吽の呼吸とも言える言葉にせずとも分かる暗黙知が形成され、細かな指示が減る。

一見、良いこと尽くめに思える「強い文化」だがデメリットもある。経営学の先行研究で共通している批判は次の3つだ。

① 自社の常識が他社、世間の非常識になりかねない思考の均質化。

② リーダーの言動が絶対的になり、従業員が盲従する独裁専制国家型組織に陥る。

③ 強い文化がマンネリ化することで、従業員が冷めてくる効果の非持続性。

「強い文化」は短期業績との関係しかない

これらの強い文化のデメリットを裏付けるかのように、『エクセレント・カンパニー』で取り上げられた企業の3分の1が1978年から1982年の間に大幅に業績を落としている。その後の経営学の研究では、強い文化は、短期業績との関係しかないことが実証されている。

最近、不正行為が社会問題化した企業は「強い文化」のタイプは違えど、強いリーダーが支配していた。実態は従業員が面従腹背を決め込み、「強い文化」のデメリットが生じたことは否めない事実だ。

トヨタ自動車が「トヨタイムズ」というオウンドメディア(Owned Media)を駆使した広報戦略を展開し始めて以来、豊田章男会長の存在感は好業績も伴い急速に高まった。子供でもテレビで見た「トヨタの偉い人」と分かるようになった。今は、そのバトンを佐藤恒治社長が受け継いだ形だ。これは、顔の見える会長や社長を担ぎ出すトップ広報の常套手段である。

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