サントリーは新しいビールで何を仕掛ける? ライバルメーカーが競争激化を警戒

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攻めに出ると見られるもう一つの要因は酒税法改正の動きだ。今年度は見送りとなったが、現在の議論では、来年度以降、ビールの税率を引き下げる一方、税率の低い発泡酒、第3のビールの税率を引き上げ、将来的に税率を一本化する方向で検討されている。

創業家社長の佐治信忠氏(左)は会長に就き、2014年10月からローソン元社長の新浪剛史氏が新社長に(撮影:鈴木紳平)

サントリーが展開する第3のビール「金麦」は昨年、ザ・プレミアム・モルツの倍以上である3632万ケースを売り上げており、第3のビールが全体の売り上げの中でも6割以上を占める。第3のビールの税率が引き上げられると、ビールとの価格差が縮小し、「安さ」という魅力が薄れるだけに、酒税法改正は逆風だ。

「シェア25%は取れるはず」

「今後、酒税が一本化されたとしても、ビールの店頭価格が一本化されるわけではない。第3のビールや発泡酒に代わる、低価格帯のビールが出てくるのでは」(外資系証券アナリスト)といった見方もある。他社に比べてビールの売り上げ比率の低いサントリーが、先手を打つ格好でスタンダードビールの強化に乗り出すのは得策といえる。

サントリーホールディングスの佐治信忠会長はかねて「ビール業界は4社の寡占市場だから、単純に4で割ってシェア25%は取れるはず」と話しており、さらなるシェア拡大には意欲的。ライバル勢が危惧する競争激化は避けられそうにない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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