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18歳の光源氏が「10歳の少女」に心奪われた深い訳 大河でも話題「源氏物語」の世界を読み解く

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しかし、半年が経ったある日、その祖母が亡くなってしまったのです。そうなると、父に引き取られることになります。今まであまり会ったことのないであろう、自分を愛しているかもわからない父親に引き取られるのは、とても悲しい出来事ですよね。そしてそんな若紫のことを案じ、「父親に引き取られる前に、自分の元に置いておきたい」と考えた光源氏によって、若紫は略取されることになります。

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「主人公がなんでそんなことを!?」とツッコミを入れたくなるシーンではあるのですが、実はこれにもいろんな考察ができます。

光源氏も小さいときに、若紫と同じ境遇にいました。正妻ではないお母さんが、正妻の家からの嫌がらせによって、亡くなってしまった経験をしていたわけです。自分に重ねるからこそ、祖母を亡くした若紫のことを案じていたのです。

「自分のもとで、幸せに暮らさせてあげたい」と考えて、光源氏が引き取り、その苦境から救い出す……という展開に話が進むことになったわけです。

紫式部も母親を早くに亡くす

ちなみに、作者である紫式部も、早くに母親を亡くしています。ドラマ「光る君へ」では、1話で悲劇的な死を迎えましたね。ドラマの展開は創作を含んでいるので、実際に紫式部の母親がどのように亡くなったかはわかりませんが、光源氏と若紫・そして紫式部の3人は、「母がいない孤独感を味わったことがある」という共通点があり、だからこそ、「苦境から助け出して(助け出させて)あげたい」という想いが重なったのではないでしょうか。

光源氏は、若紫の祖母が亡くなったときに、父親に若紫が引き取られることを聞いて、こんなふうに述べているシーンがあります。

原文:「頼もしき筋ながらも、よそよそにてならひたまへるは、同じうこそ疎うおぼえたまはめ。今より見たてまつれど、浅からぬ心ざしはまさりぬべくなむ」
現代語訳:「(若紫の)父親という頼れる関係性ではあっても、ずっと別々に暮らして来られたのだから、他人同様にうっとうしく思われるだろう。わたしは今からお世話申し上げるわけだが、わたしの深い愛情は父親以上だろう」

父親に育てられるのが幸せとは限らず、若紫のことを考えた結果として、光源氏は若紫のことを略取したというわけですね。

さて、このように、その当時の時代背景や、作者の経験を知れば知るほど、源氏物語はより面白く・奥深くなっていきます。ドラマ「光る君へ」を見ながら、源氏物語も読んで、ぜひ楽しんで見てもらえればと思います。

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