
紫式部『源氏物語』玉上琢彌 訳注/角川ソフィア文庫
『源氏物語』のどこに面白さを見いだすかは、人それぞれだ。華やかな恋愛模様がすてきだと言う人がいれば、白熱した政治描写が面白いと言う人や、深い人生訓が刺さると言う人もいる。
そして、あまり知られていない魅力の1つが、「光源氏の老いが描かれていること」にあると私は思う。
というのも、『源氏物語』の冒頭、光源氏はモテモテだった。「光る君」などと言われ、何通もの恋文をしたため、美しい女性たちと恋をする。そんな若かりし頃の光源氏を読者に見せておきながら、紫式部は、光源氏が中年になり、年下の女性たちから煙たがられるようになるところまで、しっかりと描いている。「人の一生を描くとはこういうことだ」とでも言いたげに。そう、なかなか先進的な物語なのである。
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