JR貨物社長が語る「上場可能性」や対トラック戦略 青函トンネル、並行在来線、新幹線荷物輸送は?

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――青函トンネルの共用走行についてはいかがでしょう。青函トンネル内は高速走行する新幹線と貨物列車がすれ違う際のリスクを考慮して、年末年始やゴールデンウィークなどを除き新幹線が在来線並みの速度まで落として運転していますが、札幌延伸後は新幹線もトンネル内をもっと速度を上げて走りたいはずです。

国のほうで今いろいろと検討中と聞いているので、いずれいろいろな案が出てくると思う。本州と北海道の間を運ぶ荷物は結構多いので当社にとってリードタイムは重要。新幹線が走っている間、貨物は待っていろと言われると困る。当社としては今のダイヤを維持したい。

北海道新幹線
北海道新幹線は青函トンネル内では貨物列車とのすれ違いを考慮し、速度を在来線並みに落として運転している(編集部撮影)

――貨物専用の新幹線を開発して青函トンネル内を貨物列車が高速走行するという案もあります。

国のほうで考えていただいている。当社もまったく考えていないわけではないが新幹線の知見がないので、当社が貨物新幹線を造るとは言えない。新幹線に貨物を載せる基地も必要だが、当社にはその土地がない。

――青函トンネルをもう1つ造るという大胆な構想もありますね。

私としては何とも。もう1つトンネルを造ってもそれを誰が保有して誰が維持するのか。維持費用の負担が今と同じならいいが、貨物列車しか走らないから全額を当社が負担しろということになるとまったく採算が取れない。

「新幹線荷物輸送」とのすみ分けは?

――最近、JR旅客会社の間で新幹線を使って生鮮品や精密機械などを運ぶ荷物輸送の動きが増えています。

当社が運ぶ鉄道貨物と、JR旅客会社さんが狙っている荷物輸送とはすみ分けができると思っている。ただ、新幹線の車両を改造して1編成まるごと荷物新幹線みたいなものが造られると、当社で運んでいる荷物の一部がそちらに流れてしまうのではないかという心配はある。当社には貨物輸送のノウハウがあるので、協力できる部分はいっしょにやりましょうとお声がけはしている。

――最後に、株式上場の可能性について教えてください。「JR貨物グループ長期ビジョン2030」では「完全民営化を目指す」としています。

国鉄改革時の基本方針で完全民営化を目指している。まずは本業である鉄道事業の利益が出るようにしっかりと整え、不動産事業も含めた会社全体の経営基盤を確立し、安定的に経営ができるようにしなくてはならない。ただし、完全民営化イコール上場ではないので、必ずしもすべての株式を売り出すということではなく、いろいろな手法があると思う。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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