JR貨物社長が語る「上場可能性」や対トラック戦略 青函トンネル、並行在来線、新幹線荷物輸送は?

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――もし鉄道貨物の需要が1割、2割と増えてきたら運行本数増で対応できますか。

それくらい需要が増えれば万々歳だが、そもそも現在のコンテナの輸送量はコロナ前よりも2割くらい減っている。そう考えると、需要が1~2割増えても今の列車本数で事足りる。もし列車の本数を増やす場合は機関車、貨車、運転士などの投資が必要になってくる。国鉄時代の古い列車の置き換えはやっているが、新しい投資をどんどん行っていくというのは需要がさらに増えたときかなと思う。

――行きと帰り、たとえば東京から地方と地方から東京の鉄道貨物の輸送量はバランスしているのですか。

基本的には首都圏は到着する量のほうが多い。ただ、首都圏・九州については首都圏から九州に向かう荷物のほうが圧倒的に多く、九州から首都圏に来る荷物は少ない。ほかには首都圏・新潟では、紙や米など新潟から来る荷物は多いが首都圏から運ぶ荷物は少ない。行きと帰りで荷物の量がバランスする区間は多くない。帰りに載せる荷物がなくても列車は動かさなくてはいけない。そこが大きな課題でもある。

JR貨物 犬飼社長略歴
犬飼新(いぬかい・しん)/1959年生まれ。東京都出身。1985年に早稲田大学教育学部卒業後、間組(現・安藤ハザマ)入社。2003年日本貨物鉄道(JR貨物)入社。2015年執行役員、2018年取締役常務執行役員、2022年6月から現職(撮影:尾形文繁)

トラックと比べた優位性は?

――トラックと比べたリードタイムはどうですか。駅でトラックと荷物を積み替える分だけトラックよりも時間がかかるのではないでしょうか。

単純に駅から駅へ走る距離でいうと、たとえば東京と大阪なら夜に出発すれば朝に着くので、最終目的地が駅の近くなら鉄道貨物はトラックと遜色ない。しかし最終目的地が駅から何十キロも離れていると、その分の時間が上乗せされてしまう。トラックなら荷物を積んだらそのまま最終目的地まで行ってそこで下ろせるので、ドア・トゥ・ドアのリードタイムでいうとトラックのほうが早い。

――トラックと比べると、コスト的にはどうでしょう。

区間による。鉄道の運賃は決して高いと思わないが、鉄道の駅まで集荷してくる、鉄道の駅から最終目的地まで運ぶトラックの運賃も合わせてトータルで考えると、区間によって結構バラバラ。さきほど申し上げたとおり、行きに荷物があっても帰りに荷物がなければ、空(から)で帰るよりは安くてもいいから荷物を運ぶということもある。これはトラックも同じ。単純に運賃をトラックや船と比較するのは難しい。

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