「ワクチン不信」接種拒否で流行する感染症の実態 海外赴任前の予防接種、古い日本政府の情報

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国内で入手可能な成人にも接種可能な3種混合ワクチンはテトラビックだ。ただし、世界的に広く使われているのはブーストリックスというワクチンであり、日本国内では未承認だ。留学などの際はブーストリックスでの接種を指定される場合がある。クリニックによっては個人輸入して提供している。

麻疹も全世界で流行している。2023年11月世界保健機関(WHO)の発表によると、昨年ヨーロッパで発生した麻疹患者数は45倍近くに増加したという。2022年は941人であったのに対し、2023年には約4万2200人が感染した。

麻疹は、これまでも定期的に小規模な流行を世界中で繰り返してきた。麻疹は1人の感染者から12〜18人に感染する(インフルエンザは2人程度。コロナの場合は3人程度)。空気感染することが、麻疹の感染力が強い理由の一つだ。初期症状はふつうの風邪と変わらない。2〜3日経ってからグンと症状が強くなるが、そのときにはすでに周囲に広がっている。そこまで感染力が強いと、集団の95%以上が免疫を有しないと流行が起きてしまうのだが、ワクチン接種を個人の選好のみに任せると、ワクチン接種率がそこに届くことはない。それが多くの国で麻疹の流行を繰り返している理由だ。

今回のヨーロッパでの流行は、コロナによって麻疹ワクチンの接種率がほんの少し低下したのが原因だ。麻疹含有ワクチンの1回目の接種率は、2019年の96%から2022年には93%に低下し、2回目の接種率は2019年の92%から2022年には91%に低下したと報告されている。それだけで、この大流行が起きているのだ。

今後増加する輸入感染症としての麻疹

アメリカ国内では、海外渡航者が麻疹を持ち帰るケースが複数報告されている。オハイオ州モントゴメリー州では2005年以来の麻疹患者が報告された。日本国内では麻疹患者は少数ながら発生し続けていた。コロナ禍の3年間は感染者が減ったが、2023年は28人と再び増加傾向にある。今後は外国人による持ち込み、および日本人渡航者による持ち帰りが増加し、それに伴う局所的な流行が増えると予想される。

麻疹にはインフルエンザに対するタミフルのような、ウイルスそのものに作用する特効薬はない。治療は解熱剤や、肺炎を合併した際に抗生剤を使うなど、対症療法しかない。脳炎や肺炎を起こすと重症化し、死に至る。麻疹の死亡率は0.1%程度とされてきた。ただし感染が爆発的に広がると、急速に患者が増加し、医療提供が追いつかなくなり、死亡率が上がる。事実、2019年のフィリピンでの麻疹流行時の死亡率は3.2%と報告されている。麻疹にかかるのは子どもが多い。子どもの30人に1人が亡くなる状況を想像してもらいたい。社会は大パニックに陥るだろう。

海外渡航に際しては、過去に2回以上麻疹含有ワクチン(MRワクチンやMMRワクチン)を受けたことを母子手帳で確認するか、採血して抗体価を調べると良い。もし抗体価が低ければ、追加接種することをお勧めする。もちろん、海外渡航しない人も油断は禁物だ。感染症に国境はないので、全員が麻疹含有ワクチンを2回済ませておくべきだ。

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