ウクライナ戦争で露わになったEU内の格差問題 ヨーロッパの農家はなぜ抗議活動を行うのか

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こうした拡大を促進しているのは、保守派の民主党や共和党だけではない。社会民主党や社会党といった革新政権もしかりである。それはなぜか。そこにある種のインターナショナリズムが背後にあるからである。

人権と民主主義をそれらの地域に広めるという大義名分がある。しかし、それは資本の利益にも利するものであり、革新政権は保守派と利益を折半した。この点で保守も革新も一致してグローバリゼーション促進派となった。

そして一方で、安価な労働力である移民の受け入れについても、保守政権も革新政権も積極的である。こうしてEUの拡大と国内における移民労働者の受け入れによって、フランスなどの国民は、空洞化と失業の洗礼を受けることになる。

極左・極右勢力が台頭した理由

それに怒った国民の票をあっという間に獲得し、躍進していったのが、極左政権と極右政権である。さらにウクライナ戦争が起き、インフレと不景気が追い打ちをかけ、悲観した国民は極右や極左に活路を見いだそうとしている。

革新政権と保守政権がEU拡大を謀った結果がウクライナ戦争なのだが、国民は自由と民主主義を守る戦争というお題目の中で、彼らと結びついた大手メディアの情報に動かされ、正確な情報を閉ざされてきた。

しかし、現在の悲惨な状況の中で、ことの原因がどこにあるのかを次第に知り始めてきていることも確かだ。だから国民の多くが停戦とロシアとの関係の改善を求め始めているのである。

このまま保守と革新の政権エリートが、国民を犠牲にした破滅的世界戦争へと進むのか、それとも平和に戻るのか、それは、彼らがこの農民の小さなバリケードから、ことの本質をしっかりと理解できるかどうかにかかっているともいえる。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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