「ソニー」が引き金に?決済ビジネス再編の足音 米投資ファンド「ソニー銀行子会社」買収の思惑

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思うような成長ができないSPSVの売却論は、コロナ禍前から浮かんでは消えていた。数多くの事業を抱えるソニーグループにとって、決済代行は非中核だ。とはいえ、毎年安定して黒字を計上するSPSVを急いで売却する必要性も薄い。

棚上げされていたSPSVの処遇にけりをつけたのが、ソニーグループの十時裕樹社長だった。2022年秋口、SPSVの売却話が十時氏に伝わると、「中村(英彦社長)がやりたいなら、いいんじゃないか」と快諾したという。

「(SPSVの売却は)十時氏でなければ決断できなかった」。ある投資ファンドの幹部は指摘する。成長性や資本効率の観点から、多角化が進んだ事業の取捨選択に十時氏が踏み切っていたからだ。

その象徴が、ソニーの金融事業を束ねるソニーフィナンシャルグループ(FG)の分離だ。かつての稼ぎ頭は、今や半導体やエンタメ事業の台頭により存在感が低下。資本効率も相対的に劣るため、金融事業を分離する機運が高まった。そして2023年5月、ソニーグループは2~3年後をメドにFGの持ち分比率を現在の100%から2割前後まで引き下げると表明した。

FGにとっても非中核

SPSVをめぐる交渉は、ソニーFGの議論と並行して進んでいた。FGがグループから外れれば、傘下のSPSVも自動的にグループから外れる。だが、銀行や保険、介護事業を抱えるFGにとっても決済代行事業は非中核で、保有する意義を投資家に説明しにくい。こうしてFGに先立ち、SPSVがグループから切り離されることとなった。

2024年1月末をもって、SPSVに対するソニー銀行の出資比率は57%から20%へと下がった。一定の資本関係を維持したのは、SPSVが引き続きソニーの屋号を掲げることに加え、ソネットやソニーミュージックなど、グループ企業向け取引を当面は継続するためだ。

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