最高益でも喜べない、不正に揺らぐトヨタグループ 「次の道を発明しよう」と豊田会長は呼びかけた

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豊田会長はグループガバナンスの強化策として「次の道を発明しよう」という新たなグループビジョンを発表した(撮影:尾形文繁)

グループの不正にトヨタの責任を問う声もあるが、ダイハツを調査した第三者委員会の貝阿彌(かいあみ)誠委員長は「トヨタうんぬんは関係ない。100%子会社だが、尊重して干渉してこなかったのではないか」と話す。織機の特別調査委も「(トヨタからの)プレッシャーがあった証拠はない」と強調する。

もっとも、豊田会長は「トヨタが発注者になっている場合も多く、物が言いづらい点もあった」とトヨタと各社に溝があったことを率直に認めている。

実際、織機が2017年から2021年にかけて自動車用ディーゼルエンジンの出力不正を行った経緯については、「トヨタ自動車の会議等において、エンジンの性能等に関して疑義が呈されることを懸念した」(調査報告書)とある。

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一方、トヨタ側にも遠慮があったようだ。トヨタはダイハツに小型車戦略を、日野に商用車戦略を任せてきたが、小型車開発の知見を尊重するあまりダイハツに「関与しきれなかった」(トヨタの佐藤恒治社長)。また、「トラックのノウハウはトヨタにない」(トヨタ幹部)と日野に一任していた。

トヨタ幹部は「いずれも真因はコミュニケーション不足にあった」と悔やむ。「単純な言葉だが難しい。本当に人と向き合って会話をしているかが重要だ」。

グループ各社の経営陣は現場を理解できておらず、トヨタ本体も各社の状況を把握できていなかった。トヨタは「現地現物」を大事にしてきただけに衝撃は大きい。

認証不正以外にも不祥事が多発

不正は他社でも起きている。自動車業界を見ると、2015年に独フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンの不正が世界的な大スキャンダルになった。日本では2016年の三菱自動車工業の燃費不正が、2017年には日産自動車の完成検査不正が発覚。国土交通省の調査要請を受けて、複数社が同様の事案を公表した。だが当時、トヨタグループでは不正の報告はなかった。

最近になってトヨタグループでは、認証不正以外にも愛知製鋼で規格外製品を顧客へ納入する不祥事が発生。複数の系列販売会社で不正車検や板金塗装作業の不適切な請求があったと公表している。

品質をめぐっては、デンソーが燃料ポンプ不具合で大型リコールを実施中で、2024年3月期に関連費用約1500億円を、アイシンは米国でのエアバッグ部品のリコールで約600億円の品質費用を同期に計上する。

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