中国の地方政府「債務規模が急膨張」に漂う不安 2023年末の地方債の発行残高が840兆円超え

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現行の政策上のルールでは、地方債の元本の償還は「再融資債」の発行による借り換えで賄うことができるが、利払いに関しては地方政府の(税収や土地払い下げ収入などの)財政資金を充てなければならない。言い換えれば、地方債の利払いは地方政府にとって先送りできない負担だ。

財政省のデータによれば、2023年に期限を迎えた地方債の元本償還額は3兆6658億元(約75兆6485億円)。その約9割の3兆2918億元(約67兆9306億円)は借り換えを通じて返済され、残りの3740億元(約7兆7180億円)は財政資金から充当された。

地方政府は傘下の「融資平台」を通じて借り入れた資金を地元のインフラ整備につぎ込んできた(写真は国務院国有資産監督管理委員会のウェブサイトより)

ただし留意すべきなのは、上述の数字は地方債のみのデータであり、地方政府のいわゆる「隠れ債務」は含まれていないことだ。

「特殊再融資債」の継続に注目

北京の中央政府は2023年7月、地方政府の隠れ債務削減を後押しするため、「特殊再融資債」を発行して原資に充てることを認めた。中国の市場関係者の間では、この措置が2024年も継続されるかどうかに注目が集まっている。

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特殊再融資債の発行余地は、地方政府ごとに定められた地方債の発行上限額から、実際の発行残高を引いた額となる。財政省のデータに基づき試算すると、2023年末時点の発行余地は1兆4301億元(約29兆5120億円)だった。

(訳注:中国の地方政府は傘下に「融資平台」と呼ばれる投資会社を持つ。融資平台の債務には地方政府の暗黙の保証が与えられており、公式統計に表れない「隠れ債務」と呼ばれている。IMF[国際通貨基金]は、その総額を2023年時点で66兆元[約1362兆円]と推計する)

(財新記者:程思煒)
※原文の配信は1月30日

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