日本の会社から「出禁」になったフランス人の発言 外国人が日本人と会議をするときの「あるある」
外資系企業で仕事を始めた1980年代、異文化対応に悩んでいた頃、さまざまな本を読んだ。その中で最も印象に残った本が『ハーバード流交渉術』(フィッシャー&ユーリー著)だ。その本で紹介されていた逸話で重要な気づきを得た。それは次のような逸話である。
「2人のふたごの姉妹が1個のオレンジをめぐって喧嘩になった。そこに母親が来て喧嘩をやめさせ、そのオレンジを真っ二つにして2人に分け与えた。その半分のオレンジを姉は中身だけを食べて皮を捨てた。片や妹は皮をオレンジピールにしてチョコレートケーキ作りに使い、中身を捨てた」というものだ。
自分と相手の常識ではない「第3の道」
その本を読んで以降、私の異文化対応における基本の戒めになっている。
文化や慣習の違う相手との関係構築には、相手の考えやその背景、裏側にある「ものの見方/考え方」を理解することから始める必要があるし、自分の考えを丁寧に相手が理解できるように組み立てて伝える努力が必要だ。
そうした努力によって相互理解が深まれば、それまで信じてきた自分の「常識」とも、また相手が信じている「常識」とも違う第3の道が見つかることも多い。それはまさに「多様性」があるからこそ生まれてくる新しいアイデアであり、それによって多くのイノベーションを生み出すことができる。
異文化という大袈裟な話でなくとも、日常生活において意見が違う人との付き合いは避けがちだ。面倒だし、エネルギーも必要だからだ。「本音」で話すことはどうしてもそうした軋轢を生むリスクがある。「和」を重んじる日本人には特に苦手なことだろう。
「建前」でやり過ごすことでそうした場面を避けることは、無用な摩擦をうまないためにも有効だとは思う。一方で、その場の雰囲気に合わせて、自分の意見を言わないことや、相手が本気で意思を表明しないことでせっかくの「新しい考え方」に出会う機会を失っているとも言える。
今は、多様性に対する意識も肯定的になってきている。「人と違う意見」を持つことは本来自然なことだ。国籍だけではなくジェンダーやジェネレーション、生活する地域の違い、趣味嗜好、思想信条など日本の中にも多くの多様性があることに目を向け、違う意見を寛容に受け入れると同時に自分の意見や想いを丁寧に伝えていく社会の雰囲気を作っていきたいものである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら