キーマン明かす「宇都宮ライトレール」成功の鍵 利用者数は100万人を突破、今後の展望は?

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――中尾常務は、もともとは広島市内を中心に路面電車を運行する広島電鉄で常務取締役を務めていました。どのような経緯で、宇都宮ライトレールの常務取締役に就任したのですか。

宇都宮市には今から20年ほど前にライトレールに関する講演で訪問したことがあり、前職の広島電鉄時代から縁がありました。いったんは路面電車の世界からは離れていましたが、2015年の夏に宇都宮市関係者から面談がしたいと電話連絡があり、その後、佐藤栄一市長も広島までお越しいただきました。佐藤市長は私が宇都宮市で講演をしたときのことを覚えておられ、私を宇都宮に招聘する意向を強くお持ちであることを知り、胸が熱くなりました。

宇都宮ライトレールはこれからの日本のまちづくりを変えるかもしれない大事業ということもあって、本当に私でよいのかと自問自答を繰り返しましたが、家族や広島電鉄とも相談したした上で、私の路面電車人生の集大成にしようと妻とともに宇都宮移住を決断しました。

開業日の発車式で「ライトライン、出発進行!」の号令をかける中尾常務(写真:宇都宮ライトレール)

職員の間に情報格差を作らない

――宇都宮ライトレール社長は宇都宮市の元副市長が務めており、ほかの役員の方々も芳賀町や宇都宮商工会議所などの出身者と、路面電車の実務に精通した役員の方は中尾常務だけの印象です。そのような中で開業に向けてどのような役割を果たしたのでしょうか。

路面電車について大きな知見を持つ自分が、状況に応じて効果的に事業の「牽引役」としての役割を果たすことを心がけました。路面電車を運行する軌道事業の業界用語は難しいものが多く、知見の差が出てしまうと議論が深まらないことをいちばん心配したので、自分自身の経験を分かりやすい言葉で表現することを心がけ、職員の間に情報格差を生まないよう注意を払って取り組みました。

また、新規に軌道施設の整備や運転業務などの準備を詳細に行うため、それぞれのスペシャリストに宇都宮まで来てもらい準備を進めました。

――宇都宮ライトレールは、日本の路面電車では75年ぶりとなる新規路線ということでも注目を集めています。新規路線ならではの大変さはどのようなことがあったのでしょうか。

宇都宮のある北関東はクルマ中心の社会で路面電車というものに馴染みのない地域であったことから、住民に対する公共交通の必要性の説明から始める必要があったことでした。こうしたことから、特に「住民理解の醸成」には、宇都宮市と芳賀町との連携のもと気を使って事業を進めてきました。

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