雨風太陽がNPO出身企業で"日本初"インパクトIPO 産直EC"ポケマル"「都市と地方をかきまぜる」
ポケマルのトップページには各地の生産者の商品のほか、災害や豪雪、異常高温などで被害を受けた生産者を応援するキャンペーン商品も並ぶ。
上場を視野に入れたのは、巣ごもり需要で売上が伸び、産直ECの認知度も上昇したコロナ禍渦中のこと。社会を疲弊させている要因である資本主義を批判してきた高橋さんだったが、社外取締役でユーグレナ元CEOの永田暁彦さんのひと言に上場への背中を押された。
「博之さんは橋の下で『社会を変える』と歌っているようにしか見えない。本当に社会を変えるなら武道館を目指すべきじゃないですか」。
自社を上場させた経験を持つ永田さんの言葉で、高橋さんは腹をくくった。
「それまでは資本主義が世の中を悪くしていると言ってきたけれど、資本主義のど真ん中でこの社会を変えるっていう挑戦をね、真剣にやらなきゃあかんなという気になってきましたよね」と振り返る。
折しも、SDGsの考え方が浸透するとともに、企業が事業を通じて社会課題の解決と利益追求の両方を目指すCSVやインパクト投資、ソーシャルインパクトなどの考え方が日本にも広がり始めた時期でもあった。
高橋さんらは関係人口の数を「インパクト指標」に定めて、3年がかりでインパクトIPOに向けた準備を進めてきた。
被災地の漁師から「応援するから株を買わせろ」
雨風太陽が2023年12月18日に上場するというニュースは、高橋さんの出身地であり、現在も本社が登記されている岩手県の地元紙岩手日報の一面で報じられた。
その日の夕方、高橋さんのスマホに震災直後に出会った被災地の漁師から電話が掛かってきた。「株なんて買ったことないけど、応援したいから株を買わせてくれ」。
上場によって、農家や漁師が雨風太陽の株主になった。
「農家や漁師はポケマルのお客さんであると同時に、日本の一次産業の課題に向き合う当事者。そういう人たちが課題解決のために株を買う。これは上場を通じて実現したかったことです」。
NPO法人からのインパクトIPO。「『都市と地方をかきまぜる』というミッションに共感してくれた人たちの期待とちゃんと利益を上げるというプレッシャーにさらされることが、関係人口というインパクトを最速で最大化する道。もう急がないと手遅れになる」。
そう語っていた矢先の2024年1月上旬、高橋さんは能登半島地震の被災地の支援のため、輪島市の孤立した集落へ。現地の『加賀能登食べる通信』の関係者や東日本大震災の被災地から駆けつけた生産者とともに炊き出しの支援活動を始めた。
被災した生産者への支援金や「ポケマル炊き出し支援プロジェクト」には全国のユーザーから寄付が集まる。それは13年前、東日本大震災の被災地でまかれた希望の種の萌芽だ。
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