雨風太陽がNPO出身企業で"日本初"インパクトIPO 産直EC"ポケマル"「都市と地方をかきまぜる」

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注目したのは「食」。現代の消費社会の中で、主な生産の現場である地方と消費地である都市は分断され、双方が見えにくい。

「生産者は自分の作るものの本当の価値に自信が持てず、業者の言い値で大規模な流通に乗り、消費者は安く大量に買おうという消費行動に走る。ところが、被災地で漁師の人生に触れ共感した人たちは値段なんていくらでもいいから買いたいと言うんです」

それをパッケージにできないかと考えたのだ。

しかしビジネスはまったくの素人。知り合った人たちに自分の思いをぶつけて回った。その情熱を受け取り、形にするため伴走したのが、複数の起業経験を持つ大塚泰造さん(雨風太陽取締役)だった。

大塚さんら多様な経験やスキルを持った人たちの協力を得て、高橋さんは2013年にNPO法人東北開墾を設立。高橋さん自ら東北の生産者を取材し書き上げた誌面とその生産者の作った食べものがセットになった月刊誌『東北食べる通信』を創刊した。

殻付きの牡蠣、土が付いたままの野菜、らせん状のメカブ……。読者のもとには海や畑からとって来たばかりの生産物とともに、生産者の生きざまや哲学、その食材を生んだ地域の風土や歴史がつづられた冊子が届く。

読んで料理して終わりにしないため、生産者と読者とのSNSグループを作ると、そこでの交流が生まれ、熱心な読者がグループの運営を買って出た。

すると投稿を見て生産者の畑を訪ねる人や、神輿の担ぎ手が不足している祭りまで手伝う人たちが生まれた。稲刈りの時期に田んぼがぬかるみ、助っ人を呼びかけた農家のもとにはのべ200人以上の読者が全国から駆けつけた。

高橋さんが掲げたミッション「都市と地方をかきまぜる」がまさに目の前で動き出したのだ。『食べる通信』の取り組みは共感を呼び、全国から「うちの地域でもやりたい」との声が上がり、国内では最大55地域に広がっていった。

資本主義のど真ん中で社会を変える

一方で、生産者を取材し媒体を発行するのは月1回が限界。生まれたムーブメントをもっと大きなものにするためには、もっと多くの生産者の情報をリアルタイムに発信することも必要だった。

そのため生産者が写真や言葉で自身の生産物を伝え、消費者が購入できる仕組みの検討を始めると、再び高橋さんのもとにはマーケティングや企業経営などさまざまな分野に携わる人が集まり、知恵を貸してくれた。

そのことが産直ECのさきがけとなる「ポケマル」誕生につながっていく。

ポケットマルシェのトップ画面
「ポケットマルシェ(ポケマル)」は日本最大級の産直(産地直送)通販サイトに成長した(出所:ポケットマルシェ

株式会社化を経て、2016年にオープンしたポケマルは、生産者がスマホで価格や個数などの情報を登録するだけで出品できる手軽さが特徴だ。受注すると自動的に伝票が発行され、生産者は直接ユーザーに発送する。

ユーザーは生産者のページに感想や御礼の投稿ができるほか、生産者にダイレクトメッセージを送ることもできる。その結果、コミュニケーションが活発になり、リピーターも増えたという。

ユーザーは2020年に5万2000人ほどだったが、コロナ禍を経た2023年には73万人に増加。登録している生産者も2000人から8100人へと4倍までに増えた。

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