主人公は東京に近い地方の街で生まれ育ち、地元の市役所で働く実家暮らしの33歳独身女性。ある日突然、人生をやり直すという話が展開されます。しかも、けっこうな数の人生をやり直すのに、肝心の場面はローカル話が中心で地味。それでも飽きさせないのは伏線が友達とのまるで聞き覚えがあるような会話から回収されていくからです。カラオケで歌う懐メロソングから転がる会話や、つい盛り上がる学生時代の先生の悪口など、“あるある”が伏線回収にもちりばめられているのです。
人生を何周もする主人公のあーちんこと、近藤麻美を演じる安藤サクラをはじめ、親友なっち役の夏帆、みーぽん役の木南晴夏、同級生の福ちゃん役の染谷将太、父親の田中直樹など、どの役もどこかで会ったことがありそうな人物像を演じ切っていることもこのドラマの醍醐味です。保育園児のあーちんを演じた子役の永尾柚乃ちゃんは大人顔負けの演技力を魅せてくれます。
観察力に脱帽する場面が多い
そんな芸達者の役者たちによる会話劇も超リアル。ファミレスやカフェで隣の席から聞こえてくるような内容です。たとえば、あーちん(安藤)を含む仲良し3人組が食事後にカラオケ店に行った時のエピソード。
バイトスタッフの福ちゃん(染谷)が好意でサービスしたポテトに対して「気持ちは超嬉しい。でもサービスしてくれるならドリンク、タダだよね」と、小さな不満をこぼすタイミングも言葉選びも再現性が高いと思ってしまうほどです。
また表面上ではわからないような微妙な距離感がある関係性を「麻美ちゃん」と「あーちん」という名前の呼び方で変える表し方も巧妙です。ほかにも、小学生女子の間のシール交換を「交渉術を養う場」としたり、思春期の父親に対する嫌悪感を「携帯ストラップ」で表現したりと、観察力に脱帽する場面がとにかく多いのです。
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