行き過ぎともいえるこれらの改革を武井氏が急いだ背景には、ローカル局が直面している厳しい経営環境がある。
群馬テレビは直近の2023年3月期の売上高が14億5600万円、営業利益が600万円だった。黒字を維持しているとはいえ、テレビ広告費の縮小で売上高は減少が続き、業績の落ち込みは深刻だ。
労働組合の前島委員長は「コストカットでの利益確保は限界だった。最終的には社内の照明や自動販売機までなくし、戦時中のようだった」と話す。
なお、2022年3月期には一時的に大きく利益が出ているが、これは「放送設備の減価償却費が一時的に減少した」(武井氏)ためだという。
県の広報番組終了が追い打ちに
コロナ禍に加えて打撃となったのが、群馬県の広報番組が2022年3月に終了したことだ。「広報番組からの売り上げは年間1億8000万円程度で、会社にとっては大きなダメージだった」(武井氏)。
群馬テレビは、群馬県が製作するアニメ「ぐんまちゃん」について、2021年12月の第11回の放送を「児童、青少年の射幸心を過度にあおるもの」として見送った。関係者によれば、これをきっかけに県との関係性がこじれたことが、広報番組終了の一因になったという。
業績悪化を受け2023年9月から、1日3つ放送しているニュース番組のうち、2つの番組で時間短縮に踏み切った。結果的に全放送時間は2時間15分から、1時間半に縮小。1日10本放送していたニュースは6本に減らした。
「(金銭で)協力しない市町村は取材に行く必要はない」などの武井氏による問題発言は、この番組改編をめぐる社員や組合とのやりとりの過程で出たとされる。
売上高が急激に減少する中で、報道機関としての機能や存在意義を維持しつつ、いかに生き残るか。こうした葛藤は、群馬テレビ以外のローカル局も同様に抱えている。
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