走る産業文化財、「動態保存」蒸気機関車の軌跡 国鉄時代の「やまぐち号」から東武「大樹」まで

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JR東日本の動態保存SLは、1988年の「オリエント急行」来日の際に復活したD51形498号機が最初だ。同年12月23日、オリエント急行の国内走行ラストランを上野―大宮間で牽引し華やかな復活を果たした。同機はその後、高崎―水上間の「SL奥利根号」(「SLぐんまみなかみ」の前身)を牽引、JR東日本の復活SL運転が本格化した。

D51 498 オリエント急行牽引
電気機関車EF58形61号機との重連で、来日したオリエント急行を牽引し上野駅を出発するD51形498号機=1988年12月23日(撮影:南正時)

1999年にはC57形180号機が動態復活し、同年4月29日から「SLばんえつ物語」牽引機として運転開始し、現在まで根強い人気を保っている。2011年にはC61形20号機も復活を遂げ、D51形498号機とともに主に群馬県内で活躍している。

SLばんえつ物語 運行開始当初
運行開始当初の「SLばんえつ物語」(撮影:南正時)

2014年4月からは、東日本大震災の被災地復興の応援として「SL銀河」を釜石線花巻―釜石間で運転開始した。盛岡市の公園で静態保存されていたC58形239号機を修復し、客車は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフに元JR北海道の気動車を改造した車両だった。客車の老朽化という理由で2023年6月4日に運行を取りやめてしまったが、このC58形は現在も動態保存状態にあり、JR東日本のSLは4両体制である。

C58 239 火入れ式
動態復元したC58形239号機の「火入れ式」=2013年12月12日(撮影:南正時)

ウェスタン調だった「ハチロク」

JR西日本は先述の通り、国鉄・JRの動態保存SLのパイオニアである「SLやまぐち号」を発足当初から運行していたほか、現在は京都鉄道博物館で動態保存されているC56形160号機も「SL北びわこ号」としての運転をはじめ各地で走行した。2017年にはそれまで京都鉄道博物館(梅小路蒸気機関車館)の構内で動態保存されていたD51形200号機が本線での運転に復活した。

SLわかさ C56 160
国鉄時代の1981年、C56形160号機の牽引で小浜線を走った「SLわかさ号」(撮影:南正時)

JR九州の動態保存SLは1922年製造の「ハチロク」こと8620形58654号機である。静態保存機を動態復元し、1988年8月から豊肥本線熊本―宮地間で「SLあそBOY」として運転を開始した。客車はウェスタン(西部劇)調に改装した50系客車を使用し、終点の宮地駅構内には小規模ではあるが「ウェスタン村」も設けられた。当時、JR九州には阿蘇にウェスタン調のテーマパークを造る構想もあった。この沿線でのハチロクの最高の見せ場は「立野の三段スイッチバック」越えであった。

SLあそBOY 58654
「SLあそBOY」は「ウェスタン調」をコンセプトとしていた(撮影:南正時)
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