「ニューイヤー駅伝」に創部2年で初出場の舞台裏 「富士山の銘水」チーム創設の陰に箱根の名将

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富士山の銘水チームの特色の1つは、選手が「陸上専業」であることだ。

工場に拠点を置いているメーカーなどの実業団チームだと、選手が半日、あるいはフルタイムで業務に携わりながら陸上に取り組むケースが多い。だが富士山の銘水の選手は、会社のイベントに参加するほかは陸上に専念している。

工場のある富士吉田市と、練習場所である甲府市内の山梨学院大学グラウンドが離れているためではあるが、高嶋監督は、そこに覚悟を求める。

「業務を逃げ道にはできない。陸上競技でお金をもらうのだから、付加価値を生まなければなりません。応援したくなるような、会社の誇りとなるような姿勢で取り組めば、成績はついてくる」

陸上チームの付加価値とは

業務に携われば「職場の同僚を応援する」雰囲気が生まれる。だが、それがない分、駅伝直前の合宿は富士吉田市で行い、地元で選手を目にする機会につながるように気を配った。

高嶋監督が「陸上チームの付加価値」を強く意識するのは、かつての経験も影響している。市役所のチームをニューイヤー駅伝出場へと導いたが、市長が替わると活動縮小の憂き目にあった。その際、陸上部の活動のPR効果を算出した論文も公表している。

「チームがあることで、地域貢献なりブランディングができることが大事」(高嶋監督)。そのために良い成績を出すことは必須だが、成績だけでも満たせないという。

富士山の銘水・陸上競技部
ニューイヤー駅伝当日、陸上競技部のメンバー(写真:富士山の銘水)

キャプテンの小林竜也選手は「会社に入って、何のために走るのかと迷いもありましたが、ニューイヤー駅伝に出場して、こんなに社員の方々が熱を入れて応援してくれるんだと気づきました」と語る。

「今回は初出場のご祝儀的なところがある。応援してもらえるのが当たり前だと思ってはダメだと選手に言っています」。高嶋監督はそう気を引き締める。次回2025年のニューイヤー駅伝は、関東地方の出場枠が2つ減ると見込まれ、「狭き門」となる。

ニューイヤー駅伝の顔ぶれは時代につれ入れ替わってきた。業績悪化を理由に廃部に至った企業がある一方、新たに登場した企業もある。投資効果をどう発揮するか。選手たちは走り続ける。

黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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