「ニューイヤー駅伝」に創部2年で初出場の舞台裏 「富士山の銘水」チーム創設の陰に箱根の名将

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ほどなくして2021年10月、陸上競技部設立の起案書を会社に持参した。「山梨の地元に企業の陸上チームがあればいいなと思っていました」(上田教授)。

起案書は、自身がこれまで教え子を実業団チームに送り出す中で観察してきたことや、スポーツ経営学を研究する大学同僚の意見を基にまとめた。起案書の冒頭にまず記したのは運営の目的だ。上田教授は次のように語る。

「駅伝チームは企業によってさまざまな位置付けがあっていいと思いますが、地方の企業は大企業とは違います。富士山の湧水で企業活動をしているのだから、地元の方々に応援してもらって結びつきを強めていくことにつなげられると思いました」

企業スポーツは道楽とはいかない

目標とするニューイヤー駅伝出場までのロードマップも描いた。「企業経営ですから、スポーツは道楽というわけにはいきません。結果をシビアに判断されます」(上田教授)。

掲げたのは「5年でニューイヤー駅伝出場」。徐々に活動を加速させ、地元に支援の輪を広げて長続きする姿を描いた。

そして、監督として高嶋哲氏の起用を推した。起案書作成にも協力してくれた愛弟子だ。上田教授の監督時代に山梨学院大学の陸上競技部でマネージャーを務め、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科で修士の学位を取得。これまで監督として2つの陸上競技部をニューイヤー駅伝初出場に導いた経験を持つ。

富士山の銘水・陸上競技部の高嶋哲監督
陸上競技部のメンバーを前に話す高嶋哲監督(記者撮影)

富士山の銘水の陸上競技部は、高嶋監督と山梨学院大出身の選手2人で始動した。そこにほかの実業団や大学卒の選手が加わってゆき、駅伝のエントリー要員を超える14人まで増えた。そのうち大学時代に箱根駅伝を経験しているのは4人にすぎない。いわゆる「雑草軍団」だ。

活動のインフラも選手が食事をとるクラブハウス、移動用のワゴンと少しずつそろっていった。そして迎えた2023年11月の予選会。12位以内に入ればニューイヤー駅伝に出場できるところ、後半で追い上げて11位にすべりこんだ。

元日のニューイヤー駅伝当日は、社員40人ほどが群馬に足を運んで選手に声援を送った。号砲前のチーム紹介では、1区の才記壮人選手が、エスコートキッズと一緒にペットボトルの水を飲んでみせた。

「水の会社だから、水をアピールしようと思って」。才記選手は笑顔で振り返る。正月の駅伝が終われば、陸上界は中長距離の個人種目のシーズンに入る。才記選手は1500メートルでパリ五輪出場を目指している。

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