「ニューイヤー駅伝」に創部2年で初出場の舞台裏 「富士山の銘水」チーム創設の陰に箱根の名将

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「宣伝効果ではありません」。記者が想定していた答えを、粟井太一朗・陸上部長はきっぱりと否定した。富士山の銘水で管理部長を兼務する。

今年のニューイヤー駅伝のテレビ生中継は、平均世帯視聴率が関東地区で11.2%。箱根駅伝(復路)の同28.3%には及ばないが、到達人数にして全国で2830万人が目にしている計算だ(数字はいずれもビデオリサーチ調べ)。

箱根駅伝は受験生集めに絶大な効果を発揮するため、力を入れる大学が次第に増えてきた。同じく、企業にとってもニューイヤー駅伝のPR効果は抜群と思われるのだが……。

「いい会社だと思ってほしいんです。社員、社員の家族、それに地元の山梨県、富士吉田市の方々に」。粟井部長はそう話す。社員の半数は富士吉田市の本社工場に勤務し、地元出身者が大半という。

「いい会社と言うには、給料をはじめ待遇ややりがいなどさまざまな要素がありますが、『応援できる存在があること』も大事だと思っていて」

ニューイヤー駅伝で5区を走った富士山の銘水の佐藤颯選手
ニューイヤー駅伝で5区を走った富士山の銘水の佐藤颯選手(写真:松尾/アフロスポーツ)

創部2年目での初出場には「思っていたより早かった。出場すれば応援しやすいので、常連になって順位を少しずつ上げていってほしい」と、期待を寄せる。

「名将」にもらした社長の一言

陸上競技部は2022年4月に創部。そのきっかけをもたらしたのは、箱根駅伝で名を馳せた名将だった。

山梨で駅伝といえば、山梨学院大学の名が浮かぶ。同大学を箱根駅伝の強豪校に押し上げたのが、上田誠仁氏だ。

1985年に陸上競技部監督に就くと、無名だったチームを箱根駅伝に初出場させ、さらに3度の総合優勝に導いた。2019年に監督を退き、現在は山梨学院大学スポーツ科学部の教授になっている。

富士山の銘水とは、同大学出身の短距離の女子選手を社員として受け入れてもらったことから関わりが生まれたという。

「駅伝も強くしたいな」――。

ある時、富士山の銘水の粟井英朗社長がふともらした一言を、上田教授は聞き逃さなかった。「本気でお考えですか?」。

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