トヨタ「プリウス」発売1年、求めた姿との乖離 運転したときの強烈な違和感に是非を問いたい

拡大
縮小
2015年12月9日に発売された4代目プリウス
2015年12月9日に発売された4代目プリウス(写真:トヨタ自動車)

前型の4代目は、斬新な外観の造形により当初は好みがわかれた。そこで2018年のマイナーチェンジを機に、外観がより普遍的な造形となり、2019年は1月から好調な販売となった。

振り返ると、同年2月には1位の日産「ノート」に次いで2位となり、その際の販売台数は1万1867台である。翌3月には1万5000台を超え、4~7月まで1位となって、いずれも1万台を超える販売台数であった。その好調さは衰えず、1~12月の年間販売で1位となり、その販売台数は12万5587台を数え、月平均すれば1万台超であったことになる。

プリウスが販売1位になれない理由

「一目惚れするデザイン」をテーマに、「感性に響くエモーション」と「普遍的な美しさ」を表現したという新型プリウスのスタイリング
「一目惚れするデザイン」をテーマに、「感性に響くエモーション」と「普遍的な美しさ」を表現したという新型プリウスのスタイリング(写真:トヨタ自動車)

前型当初の造形に対する好みの差の影響をかえりみ、新型プリウスは「一目ぼれするデザイン」を目指した。開発当初は、あたかもタクシーのような普遍的HVにしてもいいのではないかと豊田章男社長(当時)の言葉があったようだが、開発陣は、愛車を目指したと語る。そしてスポーツカーやスペシャリティカーかと思わせる印象深い外観がなによりの特徴となった。

それでも販売台数が1万台に届きにくい背景には、2019年当時と比べ、半導体を含め部品調達の課題が世界中の自動車メーカーを苦しめたことが挙げられる。また、コロナ禍での納車遅れの挽回といった特別な事情もあるだろう。昨年1年の販売累計で9万9000台規模にとどまり、月平均すれば8200台強と1万台には届かず、1万台超えがほぼ常態化しているヤリスやカローラに比べると、購入を躊躇させるなにかが背景にあるかもしれない。

新型プリウスのリアビュー
新型プリウスのリアビュー(写真:トヨタ自動車)

新車価格は、2015年の前型当初の売り出しが約242万円からであったのに対し、新型は275万円からと30万円以上高くなっている(FF車比較)。もっとも高額な車種では、前型が約339万円であったのに比べ、新型は392万円(E-Four比較)となり50万円以上高い。ただし、こちらはエンジンが前型の1.8リッターから2.0リッターへ変更されたぶんを含む。

それでも、値上がりぶんだけの販売動向ではないような気が私はしている。

次ページプリウスの存在意義に陰りを感じる理由
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT