BRICsに投資しないことがリスク GSアセット・マネジメント会長ジム・オニール

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--あなたは日本の機関投資家と会う機会も多いと思いますが、彼らから感じる印象は。

非常に保守的(conservative)だ。日本のビジネスピープル(会社員)もそうだし、機関投資家もそうだ。一方、興味深いことに、ミセス・ワタナベはそれほど保守的ではない。彼らはリスクを好む。

日本の機関投資家はもっと前向きに成長市場への投資を考えたほうがいい。成長市場には「未来」がある。彼らが保守的なのは、成長市場への投資が「新しい領域」だからだ。これまでとは違うことに消極的になっている。

私は今年3月に中国の南京で開催されたG20のセミナーに参加したが、南京市は約700万の人口を持ち、南京が属する江蘇省の人口はドイツ1国よりも多い。G20の政策当局者の大半はそうした事実を知らなかった。新しいことから目をそらしているからだ。

■円の適正価値は1ドル=100~110円。日銀は円高是正へ積極緩和を

--あなたは現在の円レートが非常に過大評価されているとし、その主な原因として日本銀行の消極的な金融緩和策を挙げている。

日銀の金融政策は、インフレ率をプラスに転換させるのに十分積極的とはいえない。日本はデフレから抜け出せないでいる。円が今のように高くなければ、デフレから抜け出せたはずだ。だからこそ、日銀はデフレを終わらせるために、円を安くする方向でもっと努力すべきだ。

生産性やインフレ率、貿易状況などから総合的に算出するわれわれの為替評価モデルでは、円の適正価値は1ドル=100~110円であり、現状の円レートは約30%割高と考えている。韓国企業が日本企業に比べて好調な一因にもなっている。日本の企業が中国でドイツ企業よりも劣勢にあるのは、ブランド力の違いもあるが、円高も影響しているのではないか。

--日銀は米国のFRBのように、もっとバランスシートを拡大すべきだと。

そのとおりだ。私は、FRBはすばらしい仕事をしていると考えている。FRBのバーナンキ議長は日本の状況を極めて詳細に研究したと思う。

--日本の金融市場を投資対象としてどう見ているか。

エキサイティングとは言えない。もし円が今後、下落していけば、日本の株式市場は改善するだろう。

Jim O’Neill
1978年に英国シェフィールド大学経済学士、1982年にサレー大学で博士号(Ph.D.)取得。バンク・オブ・アメリカおよびマリーン・ミッドランド銀行のインターナショナル・トレジャリー・マネージメント部門を経て、91年から95年までスイス・バンク・コーポレーション(SBC)のグローバル・リサーチの責任者。1995年10月、パートナーおよびグローバル経済調査部のチーフ・カレンシー・エコノミストとしてゴールドマン・サックス入社。グローバル経済・コモディティー・投資戦略調査部統括部長を経て、2010年9月より現職。造語「BRICs」の産みの親としても知られており、チームと共同でBRICsに関するリサーチを多数発表。英国ロイヤル・エコノミック・ソサエティー、イティネラ(Itinera)の役員を務めており、欧州経済系のシンクタンクであるブリューゲル(Bruegel)においては創設以来役員を務める。また05年にマンチェスター・ユナイテッドが個人に買収されるまで、長年にわたり役員としてチームの運営に力を注いだ。09年には教育関連の慈善行為に関してロンドン大学のインスティチュート・オブ・エデュケーションから名誉博士号を授与。


(聞き手:中村稔 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)

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