BRICsに投資しないことがリスク GSアセット・マネジメント会長ジム・オニール
ブラジルレアルは現在、危険な投資対象だと私は考えている。非常に高すぎる。最近、ブラジルのリオからロンドンに訪ねてきた人が「ロンドンの物価は安い」と言っていたが、世界中でそんなことを言う人はほかに聞いたことがない。
投資する際に重要なのはバリュエーション(市場価値)だ。その点から言って、成長市場の中でも今私が魅力的だと考えるのはロシアの株式市場。バリュエーションが割安だからだ。私は「安い(cheap)」が好きだ。
--ロシアのほかに魅力的だと考える株式市場はどこか。
第1にロシア、第2に中国。たぶん3番目がメキシコで、4番目が韓国だ。
--バリュエーションで重視する指標は。
今後1年間の企業収益予想コンセンサスを基にしたPER(株価収益率)を重視している。市場の見方を反映しているからだ。ほかには、債券利回りと比べた株の配当利回りなどを見ている。
--中国ではインフレ上昇圧力が高まっており、株式市場の停滞が続く。
中国では今、循環的な景気の減速が起こっている。今後数四半期の中国の成長は7~8%近辺となり、インフレも緩和していくと考えられる。今年は4%という消費者物価指数の上昇目標を達成できないかもしれないが、来年には達成するだろう(12年平均のインフレ率は3%を予想)。(表2、表3参照)
コモディティ価格の最近の下落は当然のことであり、今後も続くだろう。また、市場のバリュエーションから判断すると、内需に牽引された中国株の力強い回復が近々起こる可能性がある。この回復が起これば、他の市場への波及も考えられる。米国主導ではない市場の回復だ。
--ロシアや中国など成長市場には政治リスクも懸念される。
あまりに誇大視されすぎている。中国と米国の政治リスクはどちらが大きいか。過去10年を考えると、むしろ(同時多発テロやイラク・アフガン戦争のあった)米国のほうが大きいのではないか。
要するに、政治リスクは世界中どこにでもある。日本にもある。ドイツにもある。前にも述べたように、欧州経済通貨同盟は政治的な問題だ。