BRICsに投資しないことがリスク GSアセット・マネジメント会長ジム・オニール
--大震災に伴う電力不足や放射能問題などによって、日本経済の潜在成長力が低下したとも言われる。
私は日本を初めて訪れてから22年になるが、日本がまったくサプライサイドの潜在供給力を変えていないことは驚きだ。会社の同僚のトレーダーが11年前に言っていたことだが、「日本は“幸福なうつ状態(happy depression)”にある」と。
日本人は現状に満足しており、変わりたいと思っていないということだ。その状況が続くかぎり、日本経済の潜在成長力は緩やかに低下していくだろう。そして、大震災がそれを一段と助長する可能性がある。
日本には移民(immigration)、英語(English)の使用、変革の意欲(hunger for change)が必要だと思う。
この先、需要サイクルは改善に向かうだろう。しかし、日本の潜在成長力は非常に低い。人口の減少と低い生産性がその背景にある。
--英語は大きなポイントか。
できれば通訳のいない日本の会議に出席したいものだ。私が30年前にこの仕事を始めたころ、ドイツと日本に行くとつねに通訳が必要だった。現在、ドイツではまったく通訳は介さない。しかし、日本では依然として通訳を介することがしばしばだ。英語はグローバルビジネスに必須の言語。英国人である私はラッキーだが……(笑)。
--年初来、外国人投資家は日本株を4兆円近く買い越した。大震災後も買い越し基調を続けてきたが……。(直近は売り越しに転換)
信じられない。理由はよくわからないが、彼らは日本株が割安だと感じたのだろう。また、大震災が日本のサプライサイドを変えるきっかけになると考えたのではないか。そのうえで株式は大底だと判断したのだろう。
しかし、私は本当にそうか疑問に思っている。「幸福なうつ状態」と表現したように、日本は深い心理的ジレンマに陥っている。本当に成長を望むなら、変わらなければならない。