表面的に羽振りよく見える人にも貧乏の影は迫る お金、時間、知識、信頼の収支のバランスが重要
また極端にお金を貯めようとすると、時間の余裕がなくなったり、知識・情報の蓄積ができなかったり、人からの信頼をなくしたりする。お金の面での心配はなくなっても、常に忙しくて時間の余裕がなくなったり、生きるのに必要な知識・情報が貧弱になったり、人的ネットワークを失ったりするわけである。
このように貧乏とはお金、時間、知識、信頼といった資源の収入と支出のバランス(均衡と調和)が崩れた状態を指すと考えていいだろう。しかも、これらの資源のうちのどれかの収支のバランスを崩すことで他の資源の収支も狂う。
たとえば、金融機関で融資を受けるための労力を惜しんで、これまで信頼を蓄積してきた常連客からお金を借りようとする料理人の例。
時間を節約して大きな商売の機会を逃すことも
この人は、わずかな時間を節約するために信頼という資産をお金に換えてしまったわけだ。こうした人は、たとえ一度かぎりで安易にお金を借りられたとしても、より大きな商売の機会を逃してしまう。その結果お金も時間も信頼もなくなっていく。
さらに、世界的にみると知識・情報の貧困がお金や時間のさらなる貧困をもたらすという悲劇がみられる。
たとえば発展途上国に住む人々の死因の上位に下痢がある。このとき、発展途上国の人々は往々にして下痢に対し抗生物質や注射を用いた治療を要求する。しかし、下痢から命を救うには本当は経口補水液があればよい。しかも経口補水液を作るのに必要な塩、砂糖、水、レモンは発展途上国であっても誰でも比較的簡単に手に入れられる。
だが、経口補水液の知識・情報を持っていないために発展途上国の多くの住人はお金の面でも時間の面でも高くつく治療を選ぶ。結局のところ効きもしない高価な注射を求めて行列を作り、場合によっては注射針から別の病気をもらってしまったりするのである。
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