連載の第1回「コートの男で小論文」の記事中にも記したように、われわれは目先の情報を獲得することに奔走し、心のゆとりや、さらに言うならば本来人間に備わっているべき人間性のようなものを喪失しつつあるのではないか。
確かに小学校にニワトリ小屋がなく、生き物に直に触れることのない子どもたちが増加していることはわかる。また、衛生面の向上から、ハエも身近には見られなくなっているのも事実である。
だが、数学が100点だからという理由だけで、4本足のニワトリを描くような秀才君が医学部の門をくぐることになるとしたら、どこか不安だと感じる人は多いだろう。それは大学側も同じように案じていることなのである。
正確な絵を描く子の特徴は?
ところで、私はこの講義の後、30名の子どもたちの出身地や模試の成績と絵のレベルに何か相関関係がないか、検討してみた。先に断っておくが、対象となる母集団が多くないため、この情報だけをもって何らかの現象を特定し、決め付けることはできない。
だが、いくつかの興味深い傾向が見て取れた。それは、極端に模試の成績が良く、かつ地方出身の女子に、実像に近い優れた絵を描く子どもが多かったという点である。一方、都会育ちの男子で、小学校から私立で育った子どもの絵は、総じて稚拙な感じで誤りを含んでいた。
なんとも言えないが、やはり育まれた環境が子どもの特性に大きく影響し得ると考えられる。さらに、観察力、記憶力など複数の能力が絵の完成度に影響を及ぼしているのかもしれない。
いずれにせよ難関医学部入試では、この問題のように、あらゆる方面から子どもの観察力、推理力と、それが形成されてきたバックグラウンドを探ろうとする傾向が強まっているのである。
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