東大生解説「共通テスト英語」過去イチ難しい衝撃 SNS上でも英語難化の声、なぜ難しかったのか?

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これは、今までの英文読解で求められていたような、単純な読解では対応できません。このシーンに至るまでの文脈や流れを汲んで答えを選ぶ、まさに国語の小説で求められているのと同等の読解力が英語で求められていたわけです。以前の問題であれば、こういった問題はほとんどなかったと言えます。

「Aさんの発言を要約したものとして正しいものを4つのうちから1つ選びなさい」「文中に書かれている出来事として間違っているものを4つのうちから1つ選びなさい」のような問題・つまりは事実ベースで選択肢を選ぶものが多く、ただ英文を読んで、事実を解釈できれば正解になるものが多かったです。

しかし今回は、単純な事実だけではなく、登場人物の心情を汲まないといけない問題が出題されたのです。

これは、過去の英語の試験と比べ類を見ないほど、かなり高度な能力が求められている問題であると言っていいでしょう(厳密に言うと、2017年のセンター試験第5問の問3で、「登場人物がなぜそう言ったのか」を選ぶ問題がありましたが、それも前にその理由が書いてあり、そのまま直接選択肢を選べるもので、今回と比べるとかなり直接的な内容だったと言えます)。

東大受験生には既視感がある問題

一方で、東大生や東大志望の受験生からすると、こうした問題には既視感がある人が多いです。それはなぜかというと、東大の2次試験の英語の入試問題の中に、同じような問題があるからです。

東大英語の第5問では毎年、英語の小説を読み、その内容を精査し、登場人物の発言の裏やそういう展開になった背景を想像して答えることを求められる問題が出題されています。

そういった意味では、東大の過去問を解いたことがある人にとっては有利な問題だったと言えるでしょうし、ほかの受験生にとっては東大受験生に求められているような高度な能力が求められる問題だったとも言えるでしょう。

ということでわれわれの結論として、東大でも求められるような、『英語小説の解釈』という高度な読解が、今回の入試では求められました。

2025年度以降の入試がどうなるかはわかりませんが、これからの入試に対応するためには、単純に英文を訳す能力だけではなく、国語力にも等しい「Interpretation=解釈」の能力が求められるようになっていく契機になるような、そしてこれからの時代に求められる英語力の解釈の範囲を大きく広げる問題だったと言えるかもしれません。今後の入試からも目が離せませんね。

西岡 壱誠 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当

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にしおか いっせい / Issei Nishioka

1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。

そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。

著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。

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