デンソーが株主総会を開催、業績予想の開示は先だが足元で生産は8割まで回復

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デンソーが株主総会を開催、業績予想の開示は先だが足元で生産は8割まで回復

自動車部品大手のデンソーは22日、午前10時から愛知県刈谷市の本社で株主総会を開いた。

トヨタグループ各社は、東日本大震災の影響により合理的な算定ができないとして前11年3月期決算発表時に今12年3月期業績見通しの開示を見送ってきた。6月10日にトヨタ自動車が開示してからは順次公表が始まっているが、グループ筆頭格のデンソーは6月22日時点で業績予想を開示していない。同社は幅広い自動車メーカーと取引しており、トヨタ系向けの売り上げは5割程度にとどまることが大きい。総会の場で、足元の状況についてどう説明するか、会社側のコメントが注目されていた。

加藤宣明社長は冒頭の挨拶で今期の業績見通しについて、「不透明な要素が多く、現時点では開示できない。できるだけ早く公表したい」と説明。後の生産回復度合いについて「震災前と比べて4月、5月は連結ベースで7割程度だったが、6月に入って8割にまで戻った。徐々に震災前の水準に近づいているが回復途上」とした。

一方でトヨタなど完成車メーカーの生産が急回復していることから、震災後の5~6月は見送っていた期間工採用を7月から3カ月ぶりに再開することも明らかにした。7月は350人(うち50人を福島と宮城で採用)、8月は400人を採用する。

株主との主な質疑応答は以下のとおり。

--日本での生産を海外に移転することも出てくるのでは。

新興国市場の成長にあわせて、現地での生産は拡大する。ただ、国内から生産を移転させることは避けたい。先進的な技術の開発、難易度の高い部品生産、モデル工場づくりという役割を日本の拠点は担っている。国内工場がダントツの競争力を持つようにし、輸出を続けていきたい。

--今後の事業スリム化の方針は。

これまでは固定費削減に取り組んできたが、今後はプレス、切削、射出成形などの設備を小型化し、同じ面積でも生産量を増やすような取り組みをしていく。手作業の機械化、自動化もまだ余地がある。

--主要な部品のコストを半減させるという方針だが、どのように進めるのか。

海外で生産する部品では、現地で部材や機械を調達し、現地のニーズにあわせた仕様にすることでコストを下げる。たとえば日本ではカーエアコンには暖房と冷房両方の機能がついているが、タイでは暖房はいらない。現在は半減目標に対して40%減まできた。安全に関しては妥協しないし、現地でも本社でも品質保証はしっかりやっていく。

--スリム化で社員が疲弊していないか。

スリム化は雇用削減ではなく、新しい成長に寄与できる仕事に人を振り向けるということ。社員のモチベーションを引き上げていくように策を講じている。

役員賞与の支給など4議案を可決して総会は1時間35分(昨年は1時間27分)で終了。出席株主数は703人(昨年は609人、ともに役員含む)。総会の所要時間は過去最長で、出席者数も過去最多だった。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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