【ルポ】能登地震、祖父宅で直面した激しい揺れ とにかく上へ上へ逃げなければならない

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「負傷者は1階の保健室へ来てください」と校内放送があった。 祖母は疲れているのか、パニックになっているのか、座椅子に腰を下ろしたまま微動だにしない。 「腕の傷を見てもらいなよ」と声をかけても、「嫌や!動きたくない!」と言って聞かない。 筆者の妻がどうにかなだめすかし、ようやく立ち上がらせた。幸いにも軽傷だった。

この間も余震は断続的に襲ってきた。 ガタガタと校舎は震え、掲示物の紙やポスターがカサカサと音を立てる。 その度に緊急地震速報のアラートがあちこちで鳴り響く。 サイレンが何層も重なり合い、不協和音を奏でる。仕方のないことではあるが、ただでさえ過敏になった神経を余計に苛立たせられた。音が鳴るたびに娘は怖がり、筆者か妻にしがみついてしばらく離れなかった。

日が落ち切ったころ、金沢市から帰省していた叔父が自宅へ帰ることを決めた。 NHKニュースを見ると、七尾港には50センチの津波が既に到達した後だった。 祖父宅へ車を取りに戻るという叔父に妻子とついて行き、荷物をまとめることにした。 娘のオムツやら着替えやらを確保しなければならないからだ。

「いつ断水するかわかりませんよ」

一帯に街灯は少ない。スマートフォンのライトでぬかるんだ道を照らしながら歩いた。 祖父宅のリビングは、棚に飾ってあった置物やゴルフコンペの優勝カップが散乱していた。 この日の夜、筆者と妻子は七尾駅近くのビジネスホテルに宿泊する予定だった。 だが、いくら掛けてもホテルと電話が繋がらない。 仕方ないので、歩いてホテルまで行き、宿泊できるのか確認することにした。

道路はあちこちが陥没したり隆起したりしていて、パックリと地割れが起きている箇所もあった。 妻子を祖父宅に残し、それらを横目に15分ほど歩く。 パトカーや消防車がサイレンを鳴らしながら、せわしなく街中を駆け回っていた。

ホテルのインターホンを押すと、こわばった表情の中年女性スタッフが現れ、動かなくなった自動ドアを力ずくで開いた。 「シャワーは使えないし、いつ断水するか分かりませんよ」。 宿泊客だと告げると、そう念押ししたうえでチェックインの手続きをしてくれた。

「避難者も来ているんですか?」と尋ねると、女性スタッフは「はい。廊下とかにも…」と言葉少なだった。疲れ切った様子の背後で、電話機は絶えず着信音を鳴らせていた。

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