「ヒロト、お前もついに就職かぁ」。 そんなたわいもない会話をしながら、昨年9月に大学を卒業した従兄弟と日本酒を酌み交わしていたところ、祖母特製のおせち料理が詰まった重箱がカタカタと揺れ出した。
1月1日16時ごろ、筆者は5年ぶりに帰省した石川県七尾市の祖父宅で大地震に遭遇した。 当時、集まっていたのは筆者の妻子や父、祖父母ら計9人。最初の振動から若干遅れて各々のスマートフォンがけたたましいアラート音を発する。緊急地震速報だ。
数秒で揺れは収まり、このときは特に被害はなかった。 「ビックリしたね」などと話しながら、筆者はまぁ大丈夫だろうと考え、畳に腰を下ろして盃をまた手にした。
姿勢を保てなくなる激しい揺れ
すると突然、誰かに激しく揺さぶられたように、姿勢を保てなくなった。座布団に手をつき、土下座するような格好で動けなくなる。熱燗は飛び散り、ガッシャンガッシャンと何かが割れるような音も聞こえる。
「ミオを隠して!」 妻の叫び声を聞き、驚き立ちすくむ1歳9ヶ月の娘を1メートルほど先に見つける。はって近付き、腕をつかんで思い切り引っ張る。そのまま、皿や料理が散乱してグチャグチャになったテーブルの下に頭を突っ込ませた。はみ出た下半身に覆い被さり、ひたすら落ち着くのを待った。
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