窓口は社外専門機関に一本化している42位IHI(286件)、79位ニッパツ(152件)以外はすべて社内に設置。さらに多くが社外にも設置している。
この件数の評価については一般に使われている基準はないが、2011年度からこのデータを集めてきた経験から、通報できる人数が100人いれば年間1件くらいあることを1つの目安と考えている。その際、通報できる対象がグループ企業も含むのであれば連結の数字で見るのが適切だ。
いくつかの企業をご紹介しよう。まず1位の日産自動車はグローバルベースの通報件数(2078件)で、連結従業員数13万1719人で考えると、1件当たり63.4人となる。「100人に1件」を上回る水準で通報数は一定レベル以上とみられる。
2位スギホールディングスは連結従業員数1万9419人。これを通報件数1585件で割ると同12.3人となり高レベルの通報が集まっていることがわかる。
一方、ビッグモーターの保険金水増し請求問題で揺れる損害保険ジャパンを傘下に持つSOMPOホールディングスは49位の261件(グループ件数)。件数は一見多いように見えるが、連結従業員数(3万1701人)と対比させると121.5と100を上回っている。同社はESG分野ではトップクラスとして知られるが、今回の問題では、対応は後手となっている。
不適切行為で社長解任があったENEOSホールディングスも通報は低レベルだ。同社はCSR調査には回答しているものの、内部通報件数は未回答で今回のランキング対象外となっている。ただ、Webページには2022年度のグループ全体での内部通報件数が227件と掲載されている。連結従業員数(4万4617人)で計算すると196.6だった。
企業のガバナンスを見る際の1つの判断基準に
このようにガバナンス関連で問題が起きる会社は100を超えるケースが多いことは経験則から言える。もちろん100を上回っても問題が起きない会社も数多く存在するが、1つの目安としては使えそうだ。
通報件数に対比させる人数選びでは、業種によってパートやアルバイトなど臨時従業員数を加えたほうが望ましいケースもある。さらに顧客や取引先などの通報が可能な場合は想定人数を加えるといった調整も必要になるだろう。一律の計算は難しいが、少なくとも単独従業員数、連結従業員数で計算しておくことで、企業のガバナンスを見る際の1つの判断基準にはなりそうだ。
成功の方程式はないが、上位企業の事例を見ると企業の不正事例だけでなく、ハラスメントなども合わせて幅広い相談・通報を受け付けている。こうした間口の広い窓口対応が内部通報制度の成功につながると考えられる。
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