日銀「マイナス金利解除」その後に起こる7変化 そのときが来たら我々の生活はどう変わるのか

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また、銀行のように大量の債券を抱えている金融機関も、債券価格が暴落する前に売り逃げたい機関投資家も存在する。いわゆる「チキンレース」状態となり、日本国債の暴落を心配する人がいるわけだ。実際に、2023年1月に実施されたYCC(イールドカーブコントロール)の上限金利を、0.25%から0.5%に拡大した際に、ショート(空売り)していた英国のヘッジファンド「ブルーベイ・アセット・マネジメント」は大きな利益を得た、と報道されている。

債券トレーダーの多くは、今回の日銀の決定会合では、臨戦態勢で債券売却を準備していたはずだ。ただ、最近はYCCの上限金利を「1%超」に修正した10月31日の決定会合では金利が想定以上に急騰することはなかった。ひょっとしたら、マーケットは日銀が金利を上げても、瞬間的な変動はともかく日本国債が暴落するような事態は想定していないのかもしれない。日銀は大量の日本国債を保有しているものの、原則として満期まで保有するとアナウンスしていることが安心感につながっているようだ。

ヘッジファンドが狙う、急激な円高、円安?

債券価格に対して、大きく動きそうなのが為替市場だ。2023年は1ドル=150円超まで円安が進んだが、その背景には日米金利差がある。金利を引き上げ続けたアメリカとマイナス金利を堅持する日本との間の金利差が5%を超えており、このまま1ドル=160円から170円程度まで行くのではないかと予想されていた。

それが一転してアメリカの中央銀行である「FRB(連邦準備制度理事会)」が金融引き締め政策を転換することを示唆したため、日米の金利差が縮小に動くとみた投資家が、ドルを売って円を買う動きに出た。特に、日銀がマイナス金利を解除するのではないかと予想された、12月の決定会合直前の為替先物のポジションに注目が集まった。

たとえば、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の上場商品である「IMM通貨先物」の建玉(ポジション)情報を見ると「投機筋(Non-Commercial)」の動きがわかる。ヘッジファンドなどの投機筋は、日銀の金利引き上げを予想して円買い(ドル売り)ポジションをどれだけ保有していたかがわかる。決定会合直前の12月12日の数字では、Long(買い)が2万8226枚、Short(売り)が10万9357枚で、やはり依然として円安に賭けている投資家が多いことがわかる。

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