アメリカで人気沸騰「かにかま」投資合戦の舞台裏 健康志向で市場拡大、日本の水産大手に商機
各社がアメリカに熱視線を注ぐのは、ビジネスのやりやすさもある。
最大市場とされる欧州の消費量は20万トンを超えるとみられるが、攻略するうえで課題が多い。一正蒲鉾の小森道夫ESG推進部部長は「欧州ではビチュナイというリトアニア発の企業がシェアを握っており、新規参入が難しい状況」と語る。加えて、EUは輸入食品に対するハサップ(事業者がとるべき衛生管理手法)などの規制も厳しいという。
「仮にEU版のハサップを取得できたとしても、ビチュナイにやられてしまうだけ。苦労してまで負け戦をするつもりはない」(水産大手幹部)。この点で、「アメリカにはトライデント社やアクアマー社といった大手プレーヤーがいるものの、まだ参入の余地はある。規制もEUに比べると緩い」という背景がある。
マルハは大型投資、極洋は新会社設立
そんなアメリカ市場で先行するのが、水産最大手のマルハニチロだ。1985年に現地法人であるトランスオーシャンプロダクツを設立。黎明期の参入ではあったが、いまやアメリカのリテール向けでは5割程度のシェアを占めるほどの存在だ。
直近でも大型投資に動いており、ワシントン州にある同社工場の設備増強などに総額約49億円を投じる。
「マーケットが拡大しており、今の工場の生産能力だと追いつかなかった。商品によってはとにかく作って売っていくというものもあるだろうが、(認知度の高い)かにかまは、そういう状況にはない。需要が広がり、それに応じて自動的に当社の生産能力をあげていくというスタンス」 (マルハニチロの海外ユニット北米事業部・河野政道部長)
マルハニチロは海外展開を強化しており、北米の売上高は2022年度に627億円(2021年度は424億円)へ伸びている。トランスオーシャンプロダクツへの投資は、北米市場のさらなる成長に向けて欠かせない取り組みの1つだ。
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