いつまでも「3年中計」を作る日本企業の大問題 前例踏襲癖から抜けられないサラリーマン病

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本書はあえて若い人向けにと、記して書いたのだが、それは、サラリーマン病にかかっていない世代であれば、「社会課題こそがビジネスチャンス」ということを理解してくれると考えたからだ。もちろんそれ以外にも理解してくれる人はたくさんいるだろう。

地球温暖化や天然資源の問題は、技術革新によって解決できる可能性のある課題であり、高齢化や格差問題なども、前例にとらわれない発想からビジネスモデルを構築することで解決策を編み出すことができ、ビジネスにすることができる可能性があることを。

「社会起業家」をどう思うかで世代がわかる

古い世代の中には「社会起業家」という言葉自体に胡散臭さを感じている人も少なくないかもしれない。社会課題を問題視するということは、産業化そのものを否定する思想であるに違いなく、そうしたアンチ・ビジネスの活動を行うことなのだと、解釈してしまうのであろう。しかし、社会起業家の多くは、そうしたアンチ・ビジネスの思想ではなく、むしろ社会課題を解決するビジネスを成功させれば、自分たちも儲けることができると考えている。

例えば、糖尿病の患者は、食事制限を受けているゆえの「困りごと」を抱えている。材料からすべて自分で調達して調理できる人であれば、自力で「困りごと」を解決できるかもしれないが、1人暮らしの老人が毎食自炊することは、料理のできる人であっても負担であり、ましてや料理のできない人にとっては解決困難な課題である。

糖尿病患者はスーパーやコンビニに売っているような食材をそのまま買って食べるわけにはいかない。一方、スーパーやコンビニの側は、どれだけ需要があるかわからない糖尿病食材は廃棄リスクがあるため、仕入れようとはしない。

そこで、病気持ちの人向けに「おいしい総菜」を宅配するビジネスを起業すれば、社会課題も解決し、そのサービスに対価を払ってくれるリピート顧客を確保することで利益を生むこともできるのではないか。糖尿病患者だけではなく、アトピーやアレルギーを持つ子どもの親もこうした食に関する「困りごと」を抱えている。

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