こうして加藤さんは、「自分らしさ」を見つけるため、過去の自分にもう一度挑みます。自分が落ち続けた本質的な理由を「苦手なことを勉強せず、後回しにしていた」ことだと気づき、勉強を疎かにしていた英語にも向き合い、2カ月間、1日1冊参考書を終えるペースで10時間以上の勉強をこなしました。
その結果、偏差値がまったく上がらなかった英語の問題も読めるようになり、最終的に早稲田大学第一文学部、第二文学部を受験。第二文学部に合格することができました。5浪の末に、ついに彼は夢だった早稲田大学に合格することができたのです。
激動の浪人生活を送った加藤さん。浪人してよかったことを聞いたところ、「絶望を知った」、また、頑張れた理由には「早稲田が好きだった」ということを挙げてくれました。
「3浪目のとき、自分は人として終わったと思うくらい精神的に落ち込みました。だから、ほかの人のつらさもわかるようになったのが、よかったと思います。早稲田に受かること以上に、ちゃんと勉強をすることで、胸を張って生きられると思ったんです。実際にいま生きていて、沢木さんの仰った『自分の道』の最初の一歩は、受験勉強をしっかりやることだったんだと感じています」
36歳で妖怪絵本作家としてデビュー
加藤さんは作家を目指す過程で一度早稲田大学を中退したものの、再入学をして11年かけて大学を卒業。29歳ごろに出会った絵本の世界に感動したことがきっかけで、絵本のワークショップに7年間通って36歳で妖怪絵本作家としてデビューし、現在までに『せかいいちたかいすべりだい』、『ぐるぐるぐるぽん』などの作品を世に送り出しています。
早稲田に入ってからの加藤さんは、さまざまなコミュニティーで多くの友達ができ「救われた」そうです。
プロ作家を目指す人が集まるサークルではのちに漫画家として、『漂流ネットカフェ』、『惡の華』などを発表する押見修造さんとも友達になりました。冒頭でも述べたように、押見さんは加藤さんが主演した『加藤くんからのメッセージ』(監督 綿毛、配給 東風)という映画への応援メッセージを漫画にしました。
つらい思いをした浪人の経験を今、彼は「大事な試練だった」と振り返ります。
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