現場エースが管理職になると疲弊する会社の盲点 「来期から管理職ね。よろしく」だけは危険なワケ
私が在籍していた頃のリクルートには、アカウントマネージャーとマネジメントマネージャーという2つの役職がありました。アカウントマネージャーは、稼ぐことに特化し部下は持たないが、マネージャーという格は与える。マネジメントマネージャーは、人材育成や部署の業績管理に専念し、数字は持たない。こうした2つのポストを用意して、プレイヤーとマネジメント、2つの役割を明確に分けていました。
これは20年以上前の話なので今はどうかわかりませんが、リクルートは当時から「そもそもプレイングマネージャーって無理なんじゃないの?」「どちらかに専念させたほうが人も組織も成長するのでは?」と考えていたのだと思います。
優秀な人材を管理職に引き上げるのは、必ずしも最善策とはいえません。エースで4番に高い業績を上げ続けてもらうためには、管理職と同じような権威づけができる役職や呼称を与える方法もあります。現場のエースがプレイヤーとして活躍を続けていくことができるキャリアプランも検討してみたほうがいいのではないでしょうか。
現場のエースを管理職にする場合は、ミッションを明確にする
中小企業やベンチャーでは、現場のエースを管理職にせざるを得ないのも事実です。会社の規模が小さければ小さいほど、そういう判断になるでしょう。しかし「数字も上げろ、人も育てろ」は本来、無理な話です。プレイヤーとマネジメント、どちらがメインなのかをハッキリさせてあげないと本人も辛くなります。エースで4番を潰してしまったら、会社としても大損失ですよね。
エースで4番を管理職にせざるを得ない場合でもあっても、プレイングマネージャーとマネージングプレイヤーは区別するようにしましょう。プレイングマネージャーは、プレイヤーもするけれど、マネジメントがメイン。マネジングプレイヤーは、マネジメントもするけれど、プレイヤーがメイン。管理職を任命するときは、プレイヤーとマネジメントの比率、仕事内容、役割などを明示するようにしてください、
管理職が果たすべき役割を明確にする「職位要件」を示すことは、人事の重要な仕事の1つです。職位要件とは、「管理職に求めること」を具体的に明文化したもの。課長であれば、「目標設定・予算策定・実績管理・人材育成」といった管理職としてやるべきことを明示し、そのうえで「課全体の業績向上と人を育てること。この2つがあなたのメインミッションです」と伝えるのです。
課長に求めること、部長に求めることなど、管理職の役割を曖昧にしたまま、「来期から管理職ね。よろしく」と伝えるだけ。そういう会社が非常に多くありますが、それでは管理職になる人も何をしたらいいのかわかりません。プレイングマネージャーになるなら、なおさらです。