■国を越えて流通する「越境データ」
現代、国を越えた流通は、人・モノ(貿易)・カネ(ファイナンス)だけでなく、データの流通が特に重要な役割を担っています。こうした「越境データ」は、情報、検索、通信、取引、映像、企業間データなど多岐にわたる情報を含みます。
McKinsey Global Instituteの調査結果によれば、物品や財政資源の国境越えの流通は増加が鈍化している一方で、データの越境流通はインターネットの発展により国家や企業、個人をつなげ、その量は驚異的なスピードで増加しています。
具体的には、2005年から2014年の間に越境データの転送帯域が4.7Tbps(毎秒テラビット)から211.3Tbpsへと、10年で約50倍に拡大したのです(出所:Mckinsey Global Institute DIGITAL GLOBALIZATION: THE NEW ERA OF GLOBAL FLOWS)。
そしてIoT関連のデータの流通やそれに伴うビジネスやアプリケーションの展開が、さらなる越境データ流通の拡大を予示しています。
プライバシーに関する情報がインターネット上で移動することが当たり前になるとともに、利用者の不安も高まっている状況です。
「インターネット利用時に感じる不安の内容」の第1位は「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」(88.7%)です。その後に「コンピュータウイルスへの感染」(64.3%)、「架空請求やインターネットを利用した詐欺」(53.8%)と続きます(出所:総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」)。人々の情報漏えい問題に対する意識が高まっていることからも、企業のプライバシー問題への対応はこれまで以上に重要といえるでしょう。
では「プライバシー問題」について、企業はどのようなことが求められているのか、セクター・業種ごとの取り組みと実際の事例を一部紹介していきましょう。
個人情報が重要な財産となるITサービス
ソフトウェアおよびITサービスの企業は、テクノロジーの力で新規性の高い商品・サービスを提供し、顧客の課題解決を目指します。特に、サブスクリプションサービスによるサービス型ソフトウェア(SaaS)モデルが業界に浸透しています。
一方で、クラウドアプリケーションおよびクラウドプラットフォームの提供事業という個人情報の取り扱いが必要不可欠な業務を行っていることに鑑み、個人情報が個人の重要な財産であることを認識することが重要です。個人情報に関する法令等を遵守するため、個人情報保護マネジメントシステムを確立し、その継続的な見直しと改善に努めることが社会から求められています。
主要なサステナビリティ基準であるSASBスタンダードでは、ターゲット広告の販売、事業体の製品またはサービスの販売、レンタル、または共有等を通じて、データや情報を第三者に転送する二次目的で利用される利用者の数を開示することが求められることが特徴的です。
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