ENEOS経営トップ、2年連続でセクハラ解任の病理 ガバナンス不全で崩れる「旧・日石」の経営体制
「一連の不祥事は旧日石の‟黒バット”の文化の問題が表面化した。本当の改革はその文化を克服できるかにかかっている」
そう指摘するのはエネオスの前身の1社である日本石油(日石)出身で、経営コンサルタントの日沖健氏だ。「黒バット」とは、旧日石におけるエリートコースを表す隠語。「黒」は産業エネルギー販売部門、「バット」は勤労部長が野球部部長を兼任する伝統から勤労部門を指している。
1980年に社長に就任し「天皇」と呼ばれた建内保興社長まで旧日石の社長は一貫して「バット」の指定席だった。カリスマ経営者の渡文明氏になって「黒」が社長に就任。その後、「渡氏の傀儡」と言われた一色誠一氏(財務部門出身)などを挟んで、「バット」から「黒」に移った経歴を持つ杉森氏が2014年に社長(エネオスの前身となるJX日鉱日石エネルギー)に就任した。
旧日石出身の幹部に「染み付いた文化」
日沖氏は、「杉森氏は基本的には勤労畑の人間。労働組合と酒を酌み交わすのが仕事で、酒豪、豪腕として昔から社内で名を知られていた」と話す。その後の新日石時代は中部支店長、JX日鉱日石エネルギーでは小売販売本部長を務め、杉森氏は「黒」としても頭角を現す。
「杉森氏はとにかく酒をよく飲む人で、赤坂の高級クラブに現れては有名女優を呼びつけて豪遊していた。杉森氏の不祥事が発覚しても、業界では誰も驚かなかった」(エネオスの内情に詳しい業界関係者)
この業界関係者が続ける。「もともと石油元売りの販売部門は、特約店の店長らと酒を飲み、ゴルフをするのが仕事だと思っている文化がある。中でも旧日石系の特約店の親睦会などは規模も大きく、金づかいも遊び方も派手だった。旧日石出身の幹部にはこうした文化が染み付いているのではないか」。
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